◆前回のあらすじ◆
前回——優しさが請求書に切り替わり、男は急激に冷めた。
そして、帰国の日。
【「私は待っていたのに」】
帰国便の日。
出発ロビーのラウンジで、私は一人、飲み物を前に総括をしていた。
Aに会いに来た旅で、Mに会って帰る男の、一人総括である。
ため息と、それ以上のなにか。
スマホが鳴ったのは、その時だった。
Aだった。
「なんで連絡くれなかったの? 私は待っていたのに。
他の女性がいたんだね」
……えー。
「終わり」と言ったのは、あなたである。
出発前にそう言って、私の航空券を宙に浮かせたのは、あなたである。
その口が「待っていたのに」と言う。
しかも他の女性の気配まで、なぜか知っている。
女性の情報網は、ラウンジの窓を越えて、太平洋を越える。
Aは難しい。
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当時のLINEに私が打った記号を、そのまま学術資料として掲載しておく。
ただ、今になって思うことはある。
鉄格子の家を写真で見せることはできても、現実に見せることはできなかったのかもしれない。
「終わり」は、来ないでほしいの裏返しだったのかもしれない。
プライドと本音は、一人の人間の中で平気で同居する。
全部、私の願望込みの解釈である。
答え合わせの時間は、この世界には用意されていない。
第1部から言い続けている通りだ。
◆次回予告◆
第6話「全削除」(幕間・完)——蝶と呼ばれた男が、羽を畳もうと決める夜。
この物語は全4部の実録エッセイです。
第1部・第2部・幕間は全話無料、クライマックスの第3部はnoteで公開しています。
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