◆前回のあらすじ◆
前回——3ターン目までは動かなかった心が、4ターン目に来たAで動いた。
ぽっちゃりで柔らかな笑顔の、圧倒的な30分。
【痛恨のミス】
旅行のことは、ほとんど覚えていない。
名物を食べた気がする。
観光もした気がする。
何を見ても、頭の中には4ターン目の30分がリピート再生されていた。
旅行中、頭の中はAでいっぱいだった。
そして私は、致命的な事実に気づく。
LINEを交換していない。
嘘だろ、と声が出た。
Zの時は初日に交換した男が、あれだけ食らった相手の連絡先を聞いていない。
連絡する手段がない。
会いに行く以外、この恋を進める方法が存在しない。
つまり、また会いに行くしかないのである。
ちなみにあの街は家から遠い。
どのくらい遠いかというと、「もう一回行く」という判断に正当な理由が一つもないくらい遠い。
再訪できたのは、7月7日だった。
七夕である。
年に一度、離れた二人が会う日である。
狙ったわけではない。
カレンダーの都合である。
だが人間は、あとから意味を見つける生き物だ。
今でも7月7日が来ると、私はあの店の看板を思い出す。
◆次回予告◆
第4話「『覚えてるよ』」——七夕の再訪。
1ヶ月前に30分接客しただけの客を、Aは覚えているのか。
この物語は全4部の実録エッセイです。
第1部・第2部は全話無料、クライマックスの第3部はnoteで公開しています。
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