◆前回のあらすじ◆

 

前回——帰国したZからの連絡は、写真一枚と、お金の話。気づけば20万円ほど送っていた。

 

 

 

 

【「冷たいな、あなた」】

 

 

 

 

2024年4月、Zが日本に戻ってくることになった。

 

再来日の前にはマニラでダンスと歌の研修があるらしい。

 

恋の相手が「戻ってくる」のではなく「研修を受けて再派遣される」のだと知った時、私は自分が産業の仕組みの中で恋をしていたことを、初めてうっすら理解した。

 

彼女たちは季節労働者で、店は職場で、私は——客だった。

 

 

 

研修中のZから、久しぶりにまとまった連絡が来た。

 

 

 

半年の音信不通と送金依頼で冷めかけていた私の返事は、我ながら素っ気なかった。

 

 

 

「冷たいな、あなた」

 

 

 

とZは言った。

 

 

 

あの朝、高速道路で泣いていた男に向かって、である。

 

恋の温度は、同じ時に同じ高さにならない。

 

私が沸騰していた時、Zは常温だった。

 

私が冷めた頃、Zの目盛りがどこにあったのかは、わからない。

 

 

 

 

で、戻ってきたZに会いに行ったのかって?

 

 

 

 

もちろん会いに行くんです(笑)。

 

 

 

 

顔を見た瞬間、8ヶ月かけて冷ました気持ちが3秒で蒸発した。

 

大きな目が笑って目がなくなって、それで終わりだった。

 

人間の理性など、その程度のものである。

 

そしてまた毎週、高速90分の日々が始まった。

 

帰り際のキスも復活した。

 

ただし、時代は変わっていた。

 

ニンジャはもうできなくなっていて、外で会うには店公認の同伴のみ。

 

つまり、恋にはきっちり正規料金がかかるようになっていた。

 

昼の隙間で会っていた恋が、レシートの出る恋になった。

 

それでも私は毎週通った。

 

◆次回予告◆

第7話「見てはいけないもの」——2回目のサヨナラの夜、駐車場で、私は見てしまった。世界で自分だけに許された場所だと思っていた「一歩の隙間」の、本当の数を。

 

この物語は全4部の実録エッセイです。

 

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