ぐだぐだ映画感想~「工作~黒金星と呼ばれた男」 | 映画館でぐだぐだ考えた

映画館でぐだぐだ考えた

映画の感想、音楽、アウトドアについてなど、ぐだぐだと書き付けています。書いている期間だけが長いサイトです。

北朝鮮に潜入した工作員の実話!ハラハラしどうしです~

 

しばらく本ブログの更新が滞りましたがいかがお過ごしでしょうか。

暑い日が続いています。僕はといえば例によってアウトドア企画で北アルプスに行ってきました。混雑がひどくて、年々人気の山やエリアに集中していっている気がします。なんですかね。。。あと北アルプスですら結構暑かったです。

 

2年ほど前の3月、韓国映画の話題作公開が集中したことがありました。そのときに知った俳優がファン・ジョンミン。特に「アシュラ」でのパク・ソンベ市長の極悪ぶりが強烈で、その後も「コクソン」の拝み屋役、「国際市場であいましょう」の主人公役など印象的な役ばかりやっている俳優さんですが、その新作がやってきたのでいそいそ見に行ってきました。

夏休み期間に上映する映画としては紛らわしい「工作」というタイトルを持つ本作、この場合の工作は当然、夏休みの宿題ではなく、スパイ行為の「工作」です。1990年代、キム・ジョンイルの時代、韓国のスパイが北朝鮮にビジネスマンを偽って潜入した実話を描いた映画です。

主演はファン・ジョンミンの他、「お嬢さん」の変態じじい役がひどかったチョ・ジヌンなど。

 

【ざっくり感想】

これは大傑作でした。まだ記憶に新しい90年代の政治の実話を、こんなエンタメにしてくれる韓国映画の奥深さを感じます。「タクシー運転手」や「1987」に続く、韓国の腐敗しきった政権告発モノ、という感じでこれからもまだまだネタはありそうな感じですが。。日本でも「新聞記者」という映画が撮れるくらいですので、是非とも気骨のある映画人はこの路線でどんどん制作を続けてほしいと思いました。そして、ファン・ジョンミン、いつ見ても素晴らしい!

 

以下、ネタバレあり。

簡単にあらすじをいうと、北朝鮮が核開発をしているという疑惑を探るために、元軍人のパクという男が、スパイとして北朝鮮の高官に接触して、とうとう北朝鮮に潜入する、という物語です。パクが偽るのは大企業にコネのあるビジネスマン。外貨獲得に必死になっている北朝鮮の足元を見透かして、エサを撒いて潜入していきます。ところが韓国では大統領選挙が行われる時期。パクのスパイ組織に対立する候補(キム・デジュン)が当選しそうになることから話はこんがらがっていきます。

 

【緊張ポイントについて】

とにかくオープニングからラストまでハラハラしっぱなし。スパイ映画といっても、「007」や「キングスマン」みたいな荒唐無稽方向の映画ではありません。例えば最初に北京で北朝鮮関係者に接触を図るシーンなど、「いつばれるか」のスリリングな演出のみで見せていきます。クライマックスも「画」としては派手さがないものの、その緊張感たるや!という演出で、「スパイ」の実際を描いていきます。これは素晴らしいと思いました。

 

【北朝鮮】

本作でも見どころは、おそらく取材されたと思われる北朝鮮の風景です。あまりにリアルなピョンヤンの風景、キム・ジョンイルが住んでいる「御殿」の描写、そして核実験場と思われる地方の惨状などが淡々と描かれます。さすがスパイ映画、観光映画としてもすぐれていると思いました。

 

【政治メッセージ】

本作、題材的には非常に政治的な物語です。韓国の政権に対する鋭い批判を含みますが、でもその視座みたいなものが、「人権」や「民主主義」に基づいているのでその「臭さ」みたいなものはありません。あるのは不条理に対する怒り。独善的な政権がその維持のためだけに人を踏みにじっていく様が、静かな怒りで表現されています。特に北京の街角で、主人公と北朝鮮高官とのやり取りにぐっときました。

 

【友情譚として】

ここは韓国映画らしいウェットなところだと思いましたが、それほど気にならず。あのニセモノを誇らしげに掲げる、見方によっては皮肉にも見えるシーンが面白かったです。基本、泣けるシーンではありますが友情譚ならホンモノをやれよ、と思いました。。

 

というわけで、韓国映画、もちろん選んでみているのですが、さすがクオリティが高いので感心しました。韓国の映画人の気骨みたいなものが本当にうらやましい限りですよ。

 

ファン・ジョンミンのパク・ソンベは映画史に残るほどだと思ってます。最高。

アシュラ [Blu-ray] アシュラ [Blu-ray]
3,894円
Amazon