そんなことわざがある。
これを地でいっていたのが桜庭章司である。
最近では裏金内部告発をおこない、警察から24時間の監視対象になっている元警察官・仙波敏郎が近いのかも知れない。

貧困の母子家庭に生まれた桜庭は幼少より親孝行に励み、土木作業で資金を貯め、通訳を経て、当時まだ黎明期だったスポーツ記事の翻訳家になった。
紆余曲折はあったが、中年に差し掛かりようやく成功への扉が開かれようとしていた。
しかし思わぬところから暗雲がたちこめる。
「親の面倒は見ない」
妹が放った一言に親孝行の桜庭は説得の意味も込めて押し問答になった。
それだけのことで警察が急行した。
梅ヶ丘病院に連行である。
そして桜ヶ丘保養院に転院。
藤井医師によってロボトミー手術を強制されることになる。


手術の後遺症により廃人と化し、ライターを続行不可能となる。
何も続かず、無為の日々を過ごすこととなる。
時が経ち、壮年に差し掛かった桜庭は世界有数の犯罪首都マニラに流れ着いた。
桜庭はかつての過ぎたりし若き日々の回想に耽っていた。
「若かりしころ勤め先の会社の不正(手抜き工事)を指摘したこともあった」
「そして、社長から罠に嵌められて刑務所送りになったこともあった」
「そして、家族を信じ、医師にさえ、、」
藤井医師は桜庭の右手から翻訳書をうばった。
その空いた手には包丁が握られていた。
この事件は通称ロボトミー殺人事件といわれているが、
ロボトミー手術が奪ってしまった数万にものぼる人命を忘れてはいけない。

谷底のような場所だ

狭く急な階段

体育会系看護士とこの階段が脱走者の気力と体力を奪う

初診者を誘惑する綺麗な外来

かつての桜庭の怨念を感じる

とにかく崖に囲まれる

ひんやりとした冷気が漂う

閉鎖もばっちりだ

自由への扉は重く固い

金網で囲んで“体制”を磐石に

監視カメラで“狂人”を監視
桜ヶ丘保養院
現在は桜ヶ丘記念病院に名を替え
ロボトミーは“化学的ロボトミー”精神薬に品を替え
目下、“静かなる浄化”を実施中である。