いつでも、笑っていた。
いつでも、みんなの輪の中にいた。
その姿はとても楽しそうで、眩しくて。
ほんの少しだけ、羨ましかった。
そんな君が見せた、一筋の涙。
それが、こんなにも僕の心をかき乱したんだ。
「…何?」
ぶっきらぼうな、君の声。
もう、彼女の頬に、涙はなかった。
「いや、何でもない」
そう言って、彼女とは、机を挟んで背中あわせに座る。
そんなことをしたら、彼女の表情が見られない。けど、それでも良いと思った。
いや、その方が良い、と。
「ほんと、何してるの?」
「何にも。でも…」
彼女の問いに答えて、そこで言葉を切る。
彼女は、相変わらず押し黙ったまま。まるで、僕の答えを待っているかのように。
そんな時間と、この教室の空気が、何だか少し、心地良い。
「僕は、ここにいるよ」
「ッ…!」
言ってみれば、後ろから息を飲む声。
それは、次第に、嗚咽へと変わっていく。
「嫌い、あんたなんか、大っきらい」
震える声で、そう言って、また、彼女は黙ってしまった。
ただ、規則的に続く、鼻をすする音以外には。
「嫌いで結構」
知っていた。
彼女は、心から嫌いだと思っている奴に、嫌いとは言わないと。そして、彼女はあまのじゃくなんだと。
だから、僕は笑う。今泣いている、彼女の分まで。
「ずっと、ここにいる」
もう一度、その言葉を繰り返せば、かたり、と、椅子が動く音。
顔を上げれば、彼女が目の前に立っていて。
「だいっきらい…」
彼女もまた、同じことを呟いて、僕の首に手を回す。
小さな体が、震えていた。
「うん」
今度は、一つ頷いて、そっと彼女の背中を撫でる。それだけで、次第に嗚咽が大きくなっていった。
彼女は、クラスのみんなの中心的存在で。
いつも、笑っていた。
いつも、みんなの真ん中にいた。
でも、僕は知っている。
彼女が、一人悩んでいたことを。
彼女が抱える、闇の部分を。
「一人になりたくないよ」
そう、消え入りそうな声で呟いた彼女を、きつく、抱きしめた。
「ここにいる。僕が、君の分まで笑うから、今は、泣いても良いよ」
思いっきり、泣けば良い。
僕にだけ見せる姿で、想いを全て、吐き出してしまえば良い。
僕が見つめていたのは、きらきらに輝く君。
そして、孤独に震える君。
でも、笑顔の君が好きだから。
君が笑えるようになるまで、何だってしよう。
だから、今、僕はここにいる。