一通りの食事を終え、シェオルはようやく外に出た。何日も寝ていた、というわけではないことは、村の様子を見ればすぐにわかる。
焼けた臭いがまだ少し残っている村の中。当然ながら、燃えてしまった家屋も多く、村人達が協力し合いながら、復旧作業を進めていた。
――あいつの言う通りだ。また、巻き込んじまった…。
胸中で独白し、村の様子を眺めるシェオル。
だが、
「な~に、たそがれてンだよ!」
「いってぇ!」
思いっきり背中を叩いてきたのは、頬にバンソウコを張ったザグだった。その隣には、腕に包帯を巻いたレットもいる。
「あの、俺…」
「言っとくけど、謝ンなよな?」
言い切る前に、先手を打つザグ。それに、レットも大いに頷いた。
「俺達は、結局何も出来なかった。村を救ったのは、お前だよ、シェオル」
「でも…」
言いかけたその言葉を、今度は優しい手が制す。振り返れば、そこには姉が、微笑みながらシェオルの頭をぽんと叩いていた。
「お前がそんなんじゃ、張り合いがないっての」
と、これはザグ。
「お前の取り柄は、無駄な元気だろ?」
そう言って笑うのは、レット。
そうだ、ただただ自分のしてきたことに後悔の日々を送っていたあの頃とは違う。誰かを守るための、強い力。それが、自分の中にある、ということに、ようやく気付けたから。
「あんたは、今度こそ、自分の出来ることをやったんだよ」
そう言って、背中を叩いてくれた姉は、自分がどれだけ悩んでいたかを知っている。そんな人達の言葉に、励まされないわけがない。
「あぁ、そうだな!」
「よし、そうと決まれば、さっさと行くぞ!」
「俺達には、やることが山積みだからな!」
勢いの良い二人の言葉に導かれるままに、シェオルは一緒になって走り出した。
村での様子を、シェオルの部屋の窓から、ジムがじっと見ていた。新たな主として、契約を結んでしまった、あの少年。
『そんなの今更だ! だから、俺は強くなる! お前に、ちゃんとマスターだって言わせるまでな!!』
自分を嫌っていたはずの彼が、そこまで言い切ってみせたのだ。たった一人の少女のために。ならば、この茶番に、暫く付き合ってやるのも悪くはないのかもしれない。
「こういう生活もありなのかもな、ランティ」
思わず独りごちると、ジムは、そのまま具象化を解いて、姿を消した。
「お~、シェオル! 体はもう良いのか?」
「早くこっち来て手伝え!」
口々に叫ぶ村人達。
その様子を見ながら、シェオルは不意にポケットに手を伸ばした。
いつも通り、そこにはガイア・リードが入っている。だが、今までのように悲しい記憶だけを背負っているのではない。自分には、出来ることがある、守るための強い想いがある。それを、確かに実感できたから。
「お~い、シェオル!」
「早く来いよ!」
「あぁ、今行く!」
レットとザグの言葉に頷いてみせると、シェオルはどこか晴れやかな気持ちで村人達の輪の中に入っていった。