ミスティックゴート 11 | 気まぐれ図書館

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「だから言ったのだ。さっさとガイア・リードを渡せ、とな。貴様のような吠えるだけのガキが“世界を革命する力”を扱えるわけがないだろうに」



 黒い悪魔の言葉に、具象化した宿錬精霊は何も言わない。きっと、彼も同じことを思っているに違いない。



 だが、



「それでも、例えそうだとしても、俺は、こいつを手放さない。手放しちゃ、いけないんだ…!」

「やめておけ、宿錬精霊と対話もできないお前に、何ができる?」



 言われ、思わず口ごもる。対話と言うよりは、一方的な質問を繰り返す宿錬精霊。実際、あれ以降、言葉は発していない。



――やっぱり、ダメなのかよ…。俺じゃ、あの子を…ッ!

「村一つ守れんようでは、世界を統べることも叶うまい」

「ッ…!」



 その言葉に、シェオルは我に還ったように顔を上げた。相変わらず、宿錬精霊の男はそこにいる。



――そうだ、俺が、世界征服なんて言ったのは、全部あの子のためだ。世界を知り尽くして、あの子を探して助ける!



 自分で言った言葉に力を得て、シェオルは、ゆっくりと上体を起こす。震える手で、それでも、もう負ける気はしなかった。



「強い力だけが、人を守る力じゃねェ。自分の意志の強さだって、力になる!」

「何…?!」



 叫ぶ声に呼応するように、それまで反応しなかったガイア・リードが輝き始める。次いで、聞こえる声。



〔呼べ〕

「え…?」



 今まで、責めるばかりだった声が、一変する。短く、だがはっきりと、シェオルの頭に響いた。



〔お前は、俺の名を知っているはずだ〕

「名前…?」



 言われた瞬間、不意に、あの少女の姿が思い浮かぶ。去り際に、ガイア・リードをそっとシェオルに渡し、自分の手を重ねながら、微笑んでみせた、あの光景が。



『それは、世界に五つしかない大事なガイア・リード。貴方の手で育ててあげて? 名前は…』

「ジム=キャリバー!!」



 刹那、身を焼き付くさんばかりの業火がシェオルを襲う。だが、熱さは感じない。恐る恐る目を開けてみれば、底には、先ほどの宿錬精霊の男、ジムが立っていた。



「行くぞ」



 その声に導かれるままに手を伸ばせば、地面にあったはずのガイア・リードが、そのまま手に収まる。

 それが合図だったように、炎が一気に消え去り、シェオルは真っ直ぐ男を見据えた。