ミスティックゴート 3 | 気まぐれ図書館

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 しんと静まり返った森の中。朝の静寂が、いっそ清々しい。



「いやぁ、今日も平和だなぁ」

「おいおい、いくら何でも気ィ抜きすぎだろ?」



 村の自警団を務める彼ら三人は、いつものように森を巡回していた。だが、彼らが自警団に入隊して以後、起こった事件と言えば、酔っぱらった村人が店主と喧嘩した、という程度だ。名ばかり、と言うと聞こえは悪いが、それだけこの村は安穏としていた。



「そういや、昨日さぁ…」



 他愛もない会話をしながら、森の中を進んでいく。



 だが、そのうちの一人が、唐突に足を止めた。



「どうした?」

「あれ…」



 青年が指差す先には、全身黒ずくめの男が経っていた。見るからに怪しい雰囲気を持つその男の手には、剣が握られている。



「何だ、お前は…ッ!」



 相手が放つ気迫を感じ取り、別の青年が自身の持つガイアを抜く。そして、細身の剣タイプのそれを、真っ直ぐ男に突き付けた。



「どこだ?」

「何…?」



 地の底から響くような、低い声。黒ずくめの男の剣が、炎を纏い始める。



「ガイア・リードが、この村にあるはずだ。答えろ!」

「答える義務はねェよ!」



 言い放ち、自警団の青年が男に向かって走る。彼の持つ大剣のガイアは水属性。三人の中では、彼が一番有利、のはずだった。



「な、に…?」



 出来事は一瞬。



 黒ずくめの男がどのような動作をしたのかもわからない。ただわかるのは、自分が斬られた、という事実だけ。



「貴様…ッ!」



 仲間がやられたことで激昂した二人が、同時に男に斬りかかる。



 だが、



「お前らのような者に、ガイアを使うまでもない」



 刹那、男の体がゆっくりと沈む。まるで、スローモーションを見ているかのように。


「うわぁぁぁぁぁっ!」



 ゆっくりと目線を動かせば、仲間が背中から斬りつけられている。その返り血を浴びた黒ずくめの男は、笑っていた。



「ッ…!」



 もう、声も上がらなかった。無防備なところに、真っ直ぐに振り下ろされた剣。



 惨劇は、あっという間に終幕した。残されたのは、三人の遺体と、血の滴る剣を持った男が一人だけ。



「手に入れる、必ず…」



 くつくつと、男が笑う。鳥が、不気味な声を上げて飛び立っていった。



「どこだ、ガイア・リード」



 絞り出すような、それでいて、強い意志を持った声に、しかし、答える者はいなかった。