しんと静まり返った森の中。朝の静寂が、いっそ清々しい。
「いやぁ、今日も平和だなぁ」
「おいおい、いくら何でも気ィ抜きすぎだろ?」
村の自警団を務める彼ら三人は、いつものように森を巡回していた。だが、彼らが自警団に入隊して以後、起こった事件と言えば、酔っぱらった村人が店主と喧嘩した、という程度だ。名ばかり、と言うと聞こえは悪いが、それだけこの村は安穏としていた。
「そういや、昨日さぁ…」
他愛もない会話をしながら、森の中を進んでいく。
だが、そのうちの一人が、唐突に足を止めた。
「どうした?」
「あれ…」
青年が指差す先には、全身黒ずくめの男が経っていた。見るからに怪しい雰囲気を持つその男の手には、剣が握られている。
「何だ、お前は…ッ!」
相手が放つ気迫を感じ取り、別の青年が自身の持つガイアを抜く。そして、細身の剣タイプのそれを、真っ直ぐ男に突き付けた。
「どこだ?」
「何…?」
地の底から響くような、低い声。黒ずくめの男の剣が、炎を纏い始める。
「ガイア・リードが、この村にあるはずだ。答えろ!」
「答える義務はねェよ!」
言い放ち、自警団の青年が男に向かって走る。彼の持つ大剣のガイアは水属性。三人の中では、彼が一番有利、のはずだった。
「な、に…?」
出来事は一瞬。
黒ずくめの男がどのような動作をしたのかもわからない。ただわかるのは、自分が斬られた、という事実だけ。
「貴様…ッ!」
仲間がやられたことで激昂した二人が、同時に男に斬りかかる。
だが、
「お前らのような者に、ガイアを使うまでもない」
刹那、男の体がゆっくりと沈む。まるで、スローモーションを見ているかのように。
「うわぁぁぁぁぁっ!」
ゆっくりと目線を動かせば、仲間が背中から斬りつけられている。その返り血を浴びた黒ずくめの男は、笑っていた。
「ッ…!」
もう、声も上がらなかった。無防備なところに、真っ直ぐに振り下ろされた剣。
惨劇は、あっという間に終幕した。残されたのは、三人の遺体と、血の滴る剣を持った男が一人だけ。
「手に入れる、必ず…」
くつくつと、男が笑う。鳥が、不気味な声を上げて飛び立っていった。
「どこだ、ガイア・リード」
絞り出すような、それでいて、強い意志を持った声に、しかし、答える者はいなかった。