もう、忘れかけていた、こんな気持ち。
どうしようもない不安を募らせて。
手首の傷を隠すようにつけたアームウォーマー。
ひどい時は、手首の痛みがないと、生きた心地がしなくて、それを確かめるように毎晩カッターを手にした。
そんな私を、引き上げてくれる人がいた。
優しいその笑顔に、私は救われたんだ。
――rainy――
こんな暖かい気持ちを、ずっと忘れていた。
誰かに必要とされること、誰かを必要とすること。
会社でも、家でも、居心地が悪くて、それから逃げるように手首を切った。まるで、大すきなCoccoさんの歌のように。
「~♪」
鼻歌を口ずさむ気分じゃなかったけれど、頭の中に流れるのはいつもその曲だった。
何だか、とても、安心した。
そんな時、
「初めまして」
当たり前の挨拶をして、当たり前のように出会ったのは、仕事仲間の友人で。優しい微笑みに、一瞬で恋に落ちたのを自覚した。
「どうしたんだよ、にやにやして」
「ひどっ! もうちょっと言い方があるでしょ?」
「だって事実じゃん」
屈託のない笑顔を向けて、隣にぼすっと座る彼。それから、私をそっと抱き寄せた。優しく、その手が左手首を撫でる。
「寂しくなったら、いつでも言えよ?」
「うん」
全てを見透かすような言葉に、私は頷くことしか出来なかった。
アームウォーマーは、もうない。
なくしたものの代わりに貴方がくれたもの。
安らぎと、幸せな未来。