「これは、高位魔法…! アシェア!!」
驚くソフォスの言葉すら、何処か遠くに感じる。
忘れていた感覚。
大切なものを護るために自分が出来ることをする、そんな当たり前のことを。
魔力の結晶が、術を導く。彼女がゆっくりと目を開けたと同時に、術は完成した。
「闇を切り裂け! アシュートレーザー!!」
光線となって飛んでいった魔術は、魔物の腹部に命中する。それが深手となり、魔物は悲鳴のような声を上げた。
「リゲルさん、今です!」
叫ぶと、彼は頷いて、魔物の頭部に拳を叩きつける。
「はあぁぁぁっ!」
気合が、そのまま力となり、衝撃波のように空気を揺らした。
そのまま、一瞬の静寂。
そして、ぐらり、と、魔物の体が傾ぐ。
どうやら、頭部が弱点だったらしい。魔物は、一際甲高い声を上げ、消滅していった。
「消え…た…?」
自分の行動も何もかもが信じられないといった様子のアシェアに、ソフォスが話しかけてきたような気がしたが、もう、何も耳に入ってこない。茫然としたまま、彼女はその場にへたり込んだ。
使えなかったはずの高位魔法が使えた。それは、ユミルが許してくれた、と、思って良いのだろうか。
――うぅん、始めから、枷にしていたのは私の方。それを、教えてくれたのですね。
自分の手をじっと見つめ、アシェアはようやく笑ってみせる。すると、そこに上から声が降ってきた。
「まぁ、お姫様にしては、頑張ったじゃねェか」
「茶化さないでください」
言って、ふくれっ面になったアシェアに、それまで仏頂面しか見せていなかったリゲルが、不意に吹き出した。
「あ、やっと笑って下さいました」
「ッ…!」
言って、嬉しそうに笑うアシェアに、リゲルはバツが悪そうな顔を見せる。
「ったく…。シエロの人間は変だ」
「それは心外です」
恥ずかしさを紛らわすためか、言って、ぶっきらぼうに差し出された手に、アシェアは笑いながら握り返した。