Desert Moon 荒野に死すとも 4 | 気まぐれ図書館

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 翌日。

 ライトは宮廷魔導士、リンは何でも屋としての仕事を終えた後、夜、サイスと合流し、噂の“再臨”の安置されている王墓へと向かった。


「最初に言っておくが、お前達を連れて行くと決めたのは、俺だ。同行者は明かさないことになっている」

「何で?」


 いつも通りの格好のサイスとは違い、目元以外を白装束で覆う格好をさせられたリンは、今更ながら、問う。それに、サイスは意味ありげに笑ってみせた。


「何かが起こらないためさ」

「え…?」


 意味深なその言葉に、思わず聞き返すライト。だが、サイスから返事はなく、そのまま彼は歩き出して言った。


「行こうぜ、ライト」

「あ、あぁ…」


 リンに急かされ、ライトもサイスの後を追う。だが、何だ、この胸騒ぎは。そして、あの言葉がやけに引っかかる。


 何かが起こらないため、それは、まるで、何か起こることを予期しているような…。


「着いたぜ」


 言って、サイスが指示したのは、王墓を警備する衛兵達の前だ。王墓の間に続く入口は、ここしかない、と、代々王帝一族に伝えられてきたらしい。


「サイス=トゥーリア=アミール=イムベラトゥールだ」

「はっ、お待ちしておりました!」


 サイスが名乗り、王家に伝わる紋章の入ったペンダントを見せると、警備兵たちがさっと道を開ける。それに頷いてみせ、奥へと進むサイスに、ライトとリンも従った。


「よしっ、さっさと行くぞ、お前ら!!」


 先程の厳粛な雰囲気とは打って変わって、まるで子供のようにはしゃぐサイスに、兄弟は思わずため息をつく。実は、魔導士として“再臨”に関心もあった二人だが、サイスの様子に思わずその気が削がれてしまった。


「全く、緊張感ねェな」


 嘆息するライトの言葉に、盛大に頷くリン。だが、二人とも、何かに気付いたように、すぐに表情を変えた。


「ライト…」

「あぁ、間違いない。この先に“再臨”の書はある」


 まだ、中に入って数歩程度で感じる、威圧感。改めてその力の一端を知り、思わず息を呑む二人。


「お~い、さっさと行くぞ!」


 だが、そんな二人の様子におかまいなしで、サイスは少し先から手を振って二人を呼ぶ。彼からは、緊張という文字は微塵も感じられない。


「あいつも、魔術学校の卒業生だよな?」

「まぁ、国王に必要なのは、魔術の才じゃねェからな」


 ライトとリン、交互に言って苦笑するが、このままサイスを突っ走らせるわけにはいかない。自分達は、次期王帝の護衛役なのだから。


「不用意に先に行くなよ、サイス」


 とりあえず追いついて、不平を言ってやっても、サイスはそれを右から左へ流し、笑う。


「お前達だって見てみたいだろうが。あの“再臨”の書を」

「それはそうだけど…」

「お前には、思慮が足りなさすぎンだよ」


 口ごもったリンに変わって、ライトがはっきりと告げる。そして、持っていた杖を、真っ直ぐサイスに向けた。


「魔術は言霊、人の念だ。もちろん、俺達宮廷魔導士が使う魔術は、ちゃんと精霊の力を借りているがな。でも、俺やリンくらいの術者になれば、言霊だけでそれを魔術に変えられる。それが『止まれ』という言葉であっても束縛できるし、『ヘッポコピー』なんて笑っちまうような呪文でも、人を倒せる」


 言うライトの言葉に気圧されたのか、サイスは突き付けられた杖を前に、息を呑んだ。動じていないのは、同じ力を持つリンだけだ。


「ライト、いくら何でも、ヘッポコピーはウザい」

「うるせェ。例えだ、例え」


 弟の言葉に笑ってみせ、ライトはようやく杖を自分の傍らに降ろす。だが、これで、サイスには十分薬になっただろう。


「じゃあ、行くぞ。案内頼むぜ? サイス」

「あぁ」

 先刻までの観光気分を消して、ようやくまともに頷いてみせたサイスに安堵し、三人は王墓の間へと歩みを進めた。