Desert Moon 荒野に死すとも 3 | 気まぐれ図書館

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 とんでもない騒動に巻き込まれ、しかも、決行まで日にちはない。


 ひとまず、サイスから出来るだけ“再臨”についての文献を借りてから、ライトはそれらを丁寧に見ていった。だが、どれも伝承の域を出ないものばかり。


――さすがに、実際に“再臨”に触れたものはない、か…。


 伝承とされているもの、とはわかっていても、つい浮かぶ期待感。そんな自分に、思わず苦笑した。


――結局、俺も魔導士なんだよなぁ…。


 そんなことを独りごちていると、


「リン?」


 呼びかけてみれば、ゆっくりと戸が開けられる。そこには、いつになく、所在なさげなリンの姿があった。


「どうかしたのか?」

「いや、ライト、怒ってるんじゃないかなって思って」


 言って、そのまま、戸のところで立ちつくしてしまうリン。どうやら、帰り際ほとんど会話をしなかったことを気にしているらしい。そんな弟に、ライトは優しく笑ってみせる。


「ばかだなぁ、リンは。んなこと、あるわけないだろ?」


 小さい頃はたまに喧嘩をしていたが、両親が亡くなってからは、二人で必死に生きてきた兄弟。自分達の大切さをお互い知っていて、理解しているという自負がある。


 だからこそ。


 ライトは、一人胸中で先程の文献を思い出す。ことの発端となった“狂気(ノア)”という、人々の負の感情。そして、それによりもたらされた災厄を鎮めるために作られた“再臨”の魔術。危険がないはずがないだろう。


 もし、リンやサイスの身に何かあったら。

 そう思うと、帰りに、思わず言葉数が少なくなってしまっていた。


「まぁ、大丈夫か、俺達なら」

「え…?」


 唐突に言い出したライトの言葉に、リンは聞き返してくる。だが、それはすぐに不敵な笑みへと変わった。


「当然だろ? 俺達二人、最強の兄弟だもんな?」

 言って、拳を合わせる二人。笑い合う二人の未来に、曇りはなかった。