イギリスでMA in Education (TEFL)を修了し、2015年秋に日本に帰国しました。その後Ph.D.に進学したいという夢はあったものの、その前にもう一度海外で、国際協力の世界で働きたい!という別の夢を叶えるために、JICAの企画調査員(ボランティア事業)の試験を受けてみたところ(夢がたくさんある欲張りな人生です!)合格し、私は中央アジアのキルギス共和国という国に赴任することになりました。それが2016年1月のことです。


当初は2年間の契約でキルギス共和国に着任しましたが、8か月間滞在を延長し、2018年の8月末に日本に帰国しました。


その翌年、2019年4月から日本の大学院でPh.D.コースに入学するための準備を始めました。


本音を言うと、Ph.D.もイギリスのバーミンガム大学の大学院に行きたかったのですが、キルギス共和国から帰国後すぐ日本で結婚したので、家族との時間を優先し、しばらくは日本で生活することに決めました。そして、英語教育の研究ができる日本の大学院を探しました。


私は、実家のある島根県松江市に住んでいたので、地元からどうにか通える大学の大学院で、しかも英語で博士論文を書きたかったので、できれば英語ネイティブの指導教授の下で研究できる大学院を探しました。


そして、関西のとある大学の教授に、突然メールし、研究計画書を送りました。イギリス留学で培った行動力がここでも発揮されたわけです。


その教授からはすぐにメールの返信がありました。結論から言うと、その教授の下で研究をするためには、「修士課程から分析手法について学ぶ必要がある」とのことでした。「その選択が難しい場合は、博士課程から入学でき、君の研究テーマを受け入れてくれそうな教授を紹介するよ」とご提案いただき、なんと別の大学院の教授を2名も紹介してくださいました。


私は、博士課程から入学したかったので、その教授の下での研究は諦めて、紹介していただいたお二人のうちのお一人にコンタクトを取ってみることにしました。それが、神戸市外国語大学(以下、神戸外大)の大学院で指導されているカナダ人教授です。指導教授との運命の出会いの瞬間でした。ご紹介いただいた教授には心から感謝しました。


神戸外大の教授にも研究計画書を送りましたが、今思えばデータ収集の方法や分析方法も詳細が決まっていないドラフトのドラフトのような計画書だったので、よくご指導を引き受けてくださったなと思います。引き受けていただいた理由を教授に聞いたところ、研究テーマが面白い、と思われたそうです。


メールのやり取りを何度かさせていただいた後に、実際にカナダ人教授の研究室を訪れ、私の研究計画について直接話を聞いていただく機会を得ました。そして、2月に入学試験を受験しました。(大学院、特に博士課程では、入学試験の前に、あらかじめ指導教授を決めておく必要があることが一般的です。)


入学試験にも無事に合格し、2019年4月、私は神戸外大のPh.D.に入学しました。ここからまた、学生と社会人の二足のわらじを履く生活がスタートしたのです。


研究テーマは、キルギスにいた間に考えて決めていました。私が研究を続けるモチベーションは、ただ一つ!「日本の英語教育を良くしたい!」そのために自分にできる何かしらの貢献がしたい!ただそれだけです。そのために、どんなテーマが必要で、日本の英語教育の何が課題なのか、いろいろな文献を取り寄せて読み、考えた末に決めたテーマは「自律学習者の育成」でした。


研究テーマを決めたきっかけとなった出来事があります。ある友人から、私が通ったバーミンガム大学院のMAへの進学を考えている日本人女性が、コースの相談に乗ってもらいたいと言っているので紹介したい、という話がありました。


その相談者は、日本でトップクラスの大学を卒業していました。そして、英語教員を目指していました。それなのに、彼女の相談は「英語を流ちょうに話せないのに、イギリスの大学院に入学して大丈夫でしょうか?」というものでした。私は、入学基準などを説明し、最初は励ましていたのですが、話をしているうちに彼女が言いました。「私がこんなに英語を話せないのは、日本の学校の英語教育のせいですよね?」その言葉に私は一瞬言葉を失いました。日本のトップクラスの大学を卒業し、これから英語教員になろうとしている人の言葉として何とも言えない違和感を感じたのです。


「自律」もしくは「主体性」という言葉は近年よく教育現場で聞かれるようになったものの、その本来の意味って何だろう?日本では「自律」や「主体性」という言葉がただの飾りになっているのではないか?そんな気がしました。この彼女との会話がきっかけで、私は、博士論文のテーマを「自律学習者の育成」に絞りこむことができたのです。今思えば、きっかけを作ってくれた彼女に感謝です。


でも、ただ単に日本の現状を調査するだけではなく、外国語としての英語教育に成功していると言われているオランダの学校の現状と比較研究することにしました。この比較研究をすることに、カナダ人指導教授が面白い!と興味を示してくださったのです。


さて、順調にいけば、日本の大学院の博士課程は3年で修了できます。でも、いろいろな出来事が起こり、最終的に私は5年かけて今年(2024年)の3月に、ようやく修了することができました。


これから私のPh.D.コースでの出来事について書いていこうと思いますので、お付き合いいただければ幸いです。



 2024年3月に博士課程を修了し、5月に博士論文を出版しました。英語教育に興味のある方にぜひ読んでいただければ嬉しいです。

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島根大学 英語コミュニケーション講座講師