コロナ禍の最中始まった、ウクライナとロシア間の紛争は今も続いている。そして、最近はイスラエルとハマスとの紛争についてのニュースが連日報道されている。どちらも長く複雑な歴史を背景にしており、素人の私は意見を言えるほどの知識はないのだが、ただその場所に住んでいるだけで被害に遭い、死者も出ているのを見聞きすると心が痛い。

 

子供のときによく大人に言われたこと、「人の悪口を言ったり、仲間はずれにするのはよくない」「人を傷つけるようなことを言ったり、したりしてはいけない」「暴力はいけない」− 心の奥底に刻みつけられたことなのだが、でも現実の世界を見ると、偏見や差別、暴力がはびこっている。なんという矛盾だろう。

 

この夏シドニーツアーに同行し、学生たちが現地での体験を通し、それぞれが学びを深めていたのを目にした。多くの学生が「シドニーの人たちは親切だった」と口にし、またシドニーに戻って来たい、他の国にも行ってみたい、留学生ともっと仲良くなりたい・・・と言った。日本を出て飛行機でシドニーまで行き、そこに人々が生活しているのを目にする。画面上に映った画像や映像ではない、3次元で存在している、生きている人間だ。日本での慣れた生活とは多少異なるところはあるかもしれないが、でもそこには日常があり、一人ひとりの人生が確かに存在する。そう、同じ人間なのだ。

 

肌の色、国籍、言葉、そういった一見違うものを一枚一枚剥がしていけば、最後に残るのは同じ人間という事実だけではないだろうか。「誤解されたり、理不尽に扱われたくはない」と感じ、「私は勝手に誤解したり、理不尽な扱いをしていないだろうか」と自問する。同じ人間だから理解できると断言できるほどナイーブではないが、日本から飛び出した時に見える景色や出会いが気づかせてくれることは大きい。もう一度戻りたいと思うシドニーに住む人々を傷つけたくないだろうし、ましてや戦争などで死ぬかもしれない状況を作り出したくないだろう。もし、みんながそう思えたなら、シドニーツアーは未来に向けての大きな転換点になるはずだ。

 

異文化を理解する。それは今隣にいる人とお互いを理解することから始まる。この夏のシドニーへの旅が、みんなのこれからの相互理解への長い旅の始まりになればうれしい。大切な人が住んでいる国と国が戦うことのない、平和な世界への一歩は、もしかしたらこの夏から始まるかもしれない。

 

英語コミュニケーション講座

担当講師 Emma