今回は私が2014年にイギリスのバーミンガム大学の大学院に入学した時のことをお話しします。イギリスでは秋に新学期がスタートするため、9月にオリエンテーションや新入生ウェルカムイベントがあり、その後授業が始まりました。

 

私は、教育学研究科のTEFL(Teaching English as a Foreign Language)の修士課程に入学し、その年このコースには44名の学生がいました。クラスメートの国籍は様々で、約半数が中国人、残りは日本人、インドネシア、台湾、韓国などのアジアやスペインなどのヨーロッパの学生、そしてイギリス人は1名だけでした。国際色豊かなこのクラスのスーパーバイザーはマギー教授。彼女と世界中から集まった仲間たちと一年間共に学んでいきました。

 

授業初日の冒頭、教授が私たちに投げかけた質問、それは、

「How many languages do you speak?」

でした。マギー教授が、「One?」と問うと何人かの日本人が手を挙げました。日本人のクラスメートの中には英語を「自分が話せる言語」にカウントしなかった人がいたのです。このクラスはもちろん英語で行われています。入学に必要なIELTSのスコアを取得し、入学基準を満たして入学しています。そもそも英語の先生になりたい人や、現職の英語教員の集まりのクラスでした。「それなのに、英語が話せないなんてありえない、Why?」と他の国のクラスメートたちが不思議がります。教授は質問を続けました。「Two?」数人が手を挙げます。「Three?」「Four?」「Five?」と、教授の質問が続きます。

 

私は“Three”で手を挙げました。日本語、英語、クメール語が話せる(と思っている)からです。他のクラスメートらは、なんと「Six」「Seven」でやっと手を挙げる人もかなり多くいて驚きました!「いったいみんなは何国語話せるの?」中国人のクラスメートたちに聞いてみると、北京語、広東語、上海語、香港語、台湾語など地域によって異なる中国語をすべてカウントしていたのです!なるほど~!!!!中国語と言っても一括りにできず、別の異なる言語としてカウントするとは、単一言語国家の日本人の私にとっては目からうろこでした。

 

さらに驚いたことに、多くのクラスメートは第二外国語のクラスで学んだ言語で、決して流ちょうに話せるとは言えない言語もカウントしていました。例えば、学部生の時に第二言語で日本語を選択したという中国人の子は「I can speak Japanese !」と自信をもって言うので、どんな日本語を知っている?と聞くと「”こんにちは“、”ありがとう“、”私の名前は〇〇です“That’s all!」と答えたのです。それでも話せる言語にカウントしてしまう人の多いこと。

 

ほんの少しの挨拶ができるだけの言語を話せる言語としてカウントし、10か国語話せるよ!と誇らしげに言っている人もいました。この感覚の違いたるや!それならば我がクラスの日本人は全員胸を張って「I speak English!」と言うことができるでしょう!

 

この質問により教授が伝えたかったことは、「コミュニケーションは自信をもって話すことが大切」ということも含まれていたかもしれません。この授業以来、私はたとえ英語を話す時に文法や発音に自信がない場合も、自分の意見を堂々と伝えることを心がけるようにしよう!と思いました。自分をEnglish speakerとして認めることで、自信を持って英語を話せるようになります。それが楽しい会話や活発な意見交換につながるでしょう。

 

さて、英語コミュニケーション講座の後期クラスが10月から始まります。受講生の皆さんにもぜひ「How many language do you speak?」と聞かれたら、「Two (or more)!」と答え、English speakerとして英語での会話を心から楽しんでもらいたいと思います。

 

バーミンガム大学のシンボルの時計塔です。ニックネームは、「オールド・ジョー」(Old Joe)、高さは約100メートルです。

 

島根大学 英語コミュニケーション講座講師 Cathy