『メッセージ(Arrival)』という映画を知っていますか?テッド・チャンというアメリカ人が書いた短編小説『あなたの人生の物語(Story of Your Life)を基に作られ、2016年に公開されたSF映画です。

 

映画の中で突然異星人が地球上に現れるのですが、彼らはもちろん地球の言葉を話しません。彼らの目的を知るために、多くの研究者が集められ、あの手この手で接触を試みるのですが、その中に主人公の言語学者の女性がいます。彼女は彼らの書き言葉で意思疎通をできるようになるのですが、それとともに彼女の思考に変化が訪れます。異星人の書き言葉は、時制の存在しない非線形の表意文字で、地球人が使う時間が線形に進むものとは異なるものでした。時間観念の異なる言葉を理解することで、彼女は次第に現在にいながら未来を見るようになるのです。

 

異星人の考え方や彼女に訪れるいろいろな物語は、原作の小説や映画を見て楽しんでいただきたいのですが、映画の中で主人公が異なる思考、観念を理解することで影響されていく様は興味深いものでした。よく外国語を話すときと母語を話すときでは人が違って見えるとか言いますね。また、たとえば、英語を話しているときに思考が日本語ではなく、英語的になっていることに気づくこともあります。

 

異なる文化の異なる言語を話すことで、彼らの目線で見えるようになることがあります。Put oneself in someone’s shoesという表現がありますが、その立場になって気づくことは非常に多いものです。外国語が理解できたからといって、必ずしもこの映画の主人公のように思考がドラマチックに変わってしまうことはないかもしれませんが、日本語だけで物を考えるよりも確かに思考の層は複雑に深くなっているのかもしれません。相手のように考えることで、相手の気持ちを慮ることで、相手を受け入れ、より円滑にコミュニケーションがとれ、理解が深まるのではないでしょうか。

 

映画から思わぬヒントがもらえることもあります。もうすぐ冬休み。ぜひ、映画を見て、英語の勉強や異文化の理解に役立ててみてください。

 

 
英語コミュニケーション講師
Emma