自分の年齢やバックグランド、TPOにあった言葉を話すこと。それは日本語だけでなく英語でも言えることです。たくさん使うことで英語も借り物の言葉ではなく、自分の言葉にすることができます。私の経験をお伝えしますので、現地を訪れた時だけでなく映画など映像からも、皆さんご自身の言葉を構築していってほしいと考えます。

 

アメリカに行って驚いたことは、くしゃみをすると周囲にいる人が“Bless you!”とか“God bless you!”とか言ってくれる。エレベータに乗り合わせた知らない人までもそう声をかけてくれる。辞書によると、“God bless you!”は「神のお恵がありますように」と直訳される。くしゃみの場合は、「お大事に」という意味であろうということは容易に想像がつくが、当時アメリカ人が話すのを聞いていると、正式に「祝福します」という意味以外にも「上手くいくといいね」「祈ってるね」のように、日常的に気楽に会話の中で使われていました。そして、次に耳に止まったのが、“Oh my god”と言う言葉。「あらまあ!」「びっくり!」などを表現したい時に使う言葉で、これも至る所で耳にすることができます。

 

多くの日本人が現地にいる人のように“God bless you! ”や“Oh my god! ”と言う言葉を格好よく使っていましたが、私は日本語で「神様お助けくださーい」と言うことはできても英語で“Oh my god”を使うのには違和感があり使うことができませんでした。 アメリカはキリスト教徒が多いので使えるのか、あるいは 他の宗教の人はどのような言葉を使っているのかが気になり、友人たちの会話でどう言われるか気にかけていると、“My gosh.”や “My goodness.”と言う言葉を使っているのに気づいた。GoshはまだGodに近い気がして、私はカリフォルニアに滞在している間は、意識して“My goodness.”と言う言葉を使ったのを覚えています。

 

その当時学生だった私は、至る所で“Yesの代わりに“Yeah”という言葉が使われていたために、知らないうちに自分でも使っていた。カレッジを卒業した頃、友人にそろそろその“Yeah”を使うのは卒業した方がいいと言われ、若者言葉があること、そして、それは社会人としては不適切なのだということに改めて気付かされた。これもよく考えてみれば、日本語と同じ。

 

仕事を初めて間もない頃のこと。スラングやイディオムのテキストをボロボロになるまで読み込んでおられた先輩がいた。日本人の私たちにすればイディオムをたくさん使い外国人と同様にスラングを使いながら談笑していたその先輩に感心していましたが、ある日外国人の上司が彼の英語はテキストから学んだ言葉で生きた英語ではないと言った。ネイティブだから使っておかしくないイディオムや会話能力の低い外国人が使っては違和感があるイディオムがあると教えてくれた。自分の身の丈にあった言葉を習得することが自分らしい英語を話すことになるとその時思った。

2年程前のこと。アメリカ企業の採用担当者がインターンシップ生を日本で探すためやってきて、一緒に食事をした。彼女と同僚は50代でもう一人の女性は30代。日本側も私以外に30代の女性がいたために、知らぬうちに同じテーブルに座りながら同年代同士2チームに分かれて会話をしていた。レストランで食事が運ばれてきてそれをいただいた時に、ほぼ同時に「Yummy!」「Delicious!」と2つのチームが言った。ここでも年齢が違うと使う言葉が異なるのだと再認識することができた。

 

現地を訪れることのできないコロナ禍で生きた英語を学ぶのは映画や映像が一番だと思います。その地のその場の横に立っていると想像してください。映画や映像は現地に行ったのと同じ体験ができるのです。その場合、現代物でテーマも日常的なものを選ぶのをお勧めします。

 

 

アメリカ留学時代の写真。後列真ん中が自身。

 

☆ 鈴木カオル