英語コミュニケーション講座ではセルフスタディの一環として、毎週英作文を書いてきてもらいます。これは講座とは関係ないようでいて、実は皆さんの英語力をあげるのにとても大きな底力になるのだ、ということを思い出すエピソードがあります。今日はそのお話をしましょう。

 

私が高校1年生の時に体験した初海外経験の渡航先は、アメリカのシアトルでした。ホームステイしたアメリカ人家族はお父さん、お母さん、娘2人と息子1人の5人家族でした。この家族は全員が手紙を書くのが大好き、という人たち。インターネットやメールがなかったあの時代に、遠く離れたアメリカのホストファミリーと日本から連絡を取るとなると、電話か手紙しか手段はありませんでした。帰国後「アメリカでの楽しかった思い出を話したい」「見ず知らずの私にとてもよくしてくれたアメリカの家族に対して、私のつたないスピーキング力では全く伝える事の出来なかった感謝の気持ちを文章で伝えたい」という一心から、私はとにかくまめに手紙を書きました。それもお父さん、お母さん宛ての手紙に加えて、Tineke (お姉さん) 宛ての手紙、Eric (弟) 宛ての手紙、ととにかく頻繁に手紙を書きました。「前回のメールではこんな話が出たから、返答にはこんな表現を使ってみよう」「ホームステイ中のあの思い出話をしよう」と毎回あらゆるテーマで書き綴った手紙交換は5,6年は続いたと思います。今思うとホストファミリーは、私のつたない英語の手紙によくぞ付き合ってくれたものです。

 

この英語を書く、という作業は、今の私の英語力の基礎となりました。ホストファミリーは私の英語を正すこともなく、私の言いたいことをくみ取り、それに対して返答を送り続けてくださいました。あれはセルフスタディで実施している「英作文」ととてもよく似ていると思うのです。

 

自分の思いを表現してみる、それに対してサポーターや講師が少しですがコメントをする、この作業を1年間続けると、皆さんの英語は間違いなく伸びると私は確信しています。

 

当時、手紙交換をしていたアメリカのホストファミリーとは、今はEメールやSNSを使ってやり取りをしています。彼らが私のつたない英語に付き合ってくれたからこそ、その後私はアメリカの大学院に行くことを決心し、太平洋横断ヨット旅行やニュージーランドへの移住も可能となりました。また今ではお互いを訪ね合う第二の家族です。皆さんにも英語を通じて、一生の宝となる体験や友人を作ることのできる英語力とコミュニケーション力を培ってもらえたらと願っています。

 

☆香川大学 コミュニケーション講座 担当講師

Shelly

 

ホストファミリーが来日の際に訪ねた奈良公園 (1986年)