2020年度の英語コミュニケーション講座は波乱のスタートを切りましたが、オンラインという新時代のツールのおかげで前期講座折り返し地点まで到達しました。

 

講座生の皆さんも「異文化コミュニケーションを本当に画面越しで学べるの??」と半信半疑でしたでしょうが、隔離と断絶を余儀なくされた今の状態がいつまで続くか分からない世界で、それでも人間にとって不可欠なコミュニケーションの可能性を新時代のツールを使って探っていくことは思いがけないワクワク感を与えてくれますね。

 

それでも従来の対面講座で毎年体験していたことの中で画面越しではできない、どうしても寂しく思えて仕方のない異文化体験のコーナーがあります。それはアイコンタクト、握手、ハグを紹介するコーナーです。

 

毎年前期講座に設けられているこのコーナーでは、我々日本人に馴染みのない外国の挨拶や習慣を学びます。なかでも最も日本人が苦手とするハグをこの講座で体験することによって、ホームステイのホストファミリーや親しくなった外国人の友達と非言語の意思疎通ができるようになろう!というのが毎年のこの講座の目玉コーナーでもあるのです。

 

実を言うと私もハグの挨拶は苦手でした。慣れないので照れ臭い。背の低い私は相手の肩に顔が届かないので顔が潰されるようで苦しい。それでも相手に失礼にならないように無理してハグするのが常でした。

 

もちろんハグの挨拶にも色々あって、社交辞令のハグ(状況からハグしないと失礼に当たるからとか)、本当に自然に気持ちがあふれるハグ、会えて嬉しいハグ、ちょっぴり悲しいお別れのハグ、などなど。そして時には言葉に出来ない深い気持ちをそれ以外では表現できないような、そんなハグもあるのです。

 

それは体調不良で入院していた友人のエイズ感染が判明したと聞かされた時のこと。

 

次に退院してきた彼に会ったらどうやって「私は君がエイズでも怖くないよ。今までと何も変わらず親友だと思っているよ」と伝えられるだろうと思いあぐねていました。でも心の準備が出来ないうちに思いがけずばったり遭遇してしまった彼はとても苦しそうな恥ずかしそうなまるでこちらの反応を見るのを恐れているような複雑な表情で私を見たのです。その時私は生まれて初めて自然に自分から両腕を広げてハグで挨拶をしました。あんなに準備していた言葉も要らない。自分の伝えたかったことを全部そのハグひとつで表現できたのでした。

 

「一期一会」という言葉は日本の茶の湯文化の言葉で「一生に一度きりのおもてなしのつもりでお茶を点てる」という意味ですが、外国の文化である握手やハグにも「一期一会」があると私は思います。一生に一度きりのつもりで想いを込めたアイコンタクトや握手やハグは、時にどんな流暢な英語表現よりも自分の伝えたいことを伝えることができる。それは国籍や宗教や文化を超越したコニュニケーションになり得る。

 

そのアイコンタクトや握手やハグを例年のように講座で体験できない今は本当にもどかしい。画面越しに見える講座生のみなさんの表情を見ているとこの画面越しに「一期一会」のような何かを送ることができないかと考えてしまいます。

 

でもきっとできるはずなのです。世界がどんな状況にあっても人間はコミュニケーションなしでは生きられないのだから。それが例えかのミケランジェロの名画「アダムの創造」に描かれた神とアダムの指先のように触れそうで触れ合えないものでしかなくても、お互いに届くか届かないか分からない指先を相手に向かって伸ばすことこそ人間同士のつながりではないでしょうか。

 

もちろん教室に集まれる日が来たら、指先どころか握手もハグもいっぱいしよう!

Looking forward to the very day!!

 

ハグがあれば言葉はいらない?

写真出典元 Big thanks to Erika:

https://unsplash.com/@erikasayssmile

 

⭐︎英語コミュニケーション講座講師

ニックネーム:Mack

広島大学担当