【お客様は神様です8】
とあるお宅を建てさせて頂いた時の話しです。
お客さんは今お住まいの家の近く、
お子さんの学区などが変わったりしない場所で土地を探されて、
良い土地が見つかったので家を建てたいとのお話しでした。
ご依頼頂いてから企画を気に入って頂いて、
設計に入ります。
設計も許認可もトントン拍子に話が進み、
地鎮祭をして工事が始まりました。
そして、
とあるある日の朝早く、
そう午前6時とか7時とかに電話がかかってきたのです。
我々のような設計事務所というのは、
典型的な夜型人間です。
うちの事務所は朝9時半からで、
それもその時間くらいには事務所に来るっていうだけで、
実際に仕事が始まるのは10時過ぎてからです。
昔の師匠の事務所でも朝9時頃に事務所には来ますが、
それは若い奴だけで掃除なんかをしていて、
年寄りはその後適当に来ます。
それからミーティングと称してお茶をして始まるのは10時過ぎでした。
たいていどこの設計事務所でも大きな会社組織でない限りそんな感じです。
何故かというと、
設計の仕事というのはほとんどが夜行っているからです。
昼間というのは、
お客さんと打ち合わせに行ったり、
敷地を見に行ったり測量しに行ったり、
役所に行ったり、
現場に行ったり、
しますので、
忙しくなるとほとんど事務所にはいません。
たとえ事務所にいても、
人が来たり、
打ち合わせをしたり、
電話がかかってきたり、
調べ物をしていたり、
何しろ何かするのに相手などがいることは昼間しか出来ませんので。
そこで、
帰ってきてから、
その打ち合わせや現場の内容によって、
考えたり検討したりして設計したりすることになる。
なので必然的に夕方事務所に帰ってからが設計の時間になり、
夜型人間になってきます。
自慢じゃありませんが、
毎日事務所にいるいないはとにかく忙しくなると、
夜寝るまでパソコンとにらめっこしています。
若い頃などは午前様など当たり前で、
泊まり込み徹夜なんてのも当たり前でした。
まあ、
今では年くって流石に無理ですが。
たぶん、
どこの事務所でも大なり小なり違いはないと思います。
なので逆に言えば、
夜なら何時に電話されても連絡されてもかまいません。
ということにもなるのです。
このため設計事務所というのは夜遅いので、
そのかわり朝も遅いんです。
工務店さんなどはこういうことをよく知っています。
現場は朝早いです。
朝8時には集まって、
8時半には準備から始まり、
9時から本格的に始まります。
だって冬など夕方暗くなったら仕事できませんので。
明るいうちに進めたいのです。
でも監督さんは、
午前中は電話したってどうせ先生出~へんし、
と、
よく知っているんです。
そんな私の携帯に、
朝7時前から電話がかかってきます。
はっきり言ってまだ寝てます。
前日寝たのは2時3時です。
掛けてきたのは先のお客さん、
先生!
今現場にいるんですけどあそこはなんでこうなってるんですか?
寝ぼけ頭の私、
は~?
そうなんですか~?
どうなんでしょう~?
頭廻らへん・・
それからは3日と空けずに朝早くに電話がかかってきます。
いやはや・・
勘弁して欲しい。
どおゆうことかと言うと、
お客さんはけっこうお忙しくされているサラリーマンです。
お忙しいので毎日帰りは遅くて現場を見に行っても真っ暗です。
しかも休みの日は大抵が出張やゴルフ、
これも仕事です。
このため打ち合わせはどうしても奥様がいらっしゃることになり、
奥様から報告を受けることになります。
でも御主人だって当然のこと新居の工事が気になってしょうがない。
そこでお客さんは、
いつも夜帰ってから行っていた犬の散歩を、
毎朝仕事に行く前に行くことにしたのです。
毎朝早起きをして、
犬を連れて、
まだ誰も来ていない現場を見に行くことにしたわけです。
だってお客さんはその分早く寝るだけのことですから・・
そして気になることがあると、
現場にはまだ誰も来ていませんから。
私に電話する。
いや気を遣って何日かは我慢するのですが、
我慢ならなくなって電話する。
いやはや、
勘弁して欲しい・・
迷惑な・・
あ、
ごめんなさい神様・神様・・
そう、
お客様は神様です。
そこで、
それからは、
こちらの仕事パターンを変えて、
週に一回は曜日を決めて朝7時から現場に行くことにしました。
毎週何曜日は御主人がいらっしゃる朝には現場に来ますと。
完全夜型人間の私が週1日は早起きです。
おかげさまでよい家が出来上がり、
お客様にも喜んで頂きました。
完成した後は私も現場監督も喜びました。
もう、
早起きしなくていい!
Atelier繁建築設計事務所HP
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よもやま建築日記~家づくりの現場から~
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