なぜ自然素材なのか。




先日、とある工務店の完成住宅見学会に行って来ました。


自然素材で建てられた本当に気持ちの良い家でした。



なんといっても臭いが違います。


ノンホルムアルデヒドとは言うものの、今時の無臭の家とは違う、桧の香りがプンと香ってくる、心安らぐ家でした。




その時、現場監督と話してたことなんですが、自然素材についてちょと・・。




自然素材といえばその大元となる木ですが・・。




無垢の木は十分に乾燥させなければ家には使えません。


しかし、どんなに乾燥させても長い年月で必ず収縮し反ってきます。


新築後の無垢木の家は夜寝静まるとパシパシと木がはじけるような音が聞こえてきます。木が収縮して動いているからで、こうやって木の家は動くことで接合部がすり合って強くなって行くのですが、これが木が生きていると言われる所以でもあります。




ところが、これによってたとえば太い柱や梁などには最初はきれいでもいつの日か「す」呼ばれる亀裂が入ってきます。


この「す」は木材の端部に出来ない限り強度的にはまったく問題のない物です。そして、木は反ることによって「す」が入るのですから、端部にこの「す」が入ることなど基本的にあり得ません。




ところが、見た目の問題なのか、この「す」を極端にいやがる人があまりにも多い・・、そこで開発されたのが集成材です。


この集成材は、接着剤で木を張り合わせた物ですから、反ることなどあり得ません。ただ、接着剤は化学製品ですからいくらノンホルムアルデヒドとはいえどもシックハウスなどに対しては弱く、木の風合いや香りなどは損なわれることになってしまいます。




もちろん集成材を使うのは、より小さな断面で大きな強度を得るためや、本来の木とは違う自由な形状を得るためなど、それだけの理由ではないのですが、「環境に優しい」という意味では間伐材や木っ端を集めて無駄なく造る物ですから1本の木から1本しか取れない無垢の木などよりよっぽど「地球環境には優しい材料」と言えます。




無垢材はその家に優しい材料であって、地球環境には?とわかって感謝して使わなければ・・・。


それを「す」が入ってるから替えろ!なんて人は無垢材など使ってはいけません。






昨今は無垢の床板が大流行しています。


素晴らしい肌触りと風合いを持つ床板・・、とっても良いですね。




でも、考えてみて下さい。昔は床板は無垢しかなかったんです。それがなぜみんな複合フローリングになってしまったんでしょう?


値段が高いから安くするため?だったら昔よりも今の方が木材は遙かに高価です。


それは、無垢材には致命的な欠点があるため、それを克服するために複合フローリングが開発されたのに他なりません。




私など子供の頃は学校といえばまだ木造校舎の時代でした。そのくらいの世代の方達はよくわかっていらっしゃると思うのですが、学校で上履きを履かずに歩くことなどあり得ないことでした。歩くとギシギシ音がしますし、よく足を引っかけて転ぶ子がいたものです。




木は反る・・、木は収縮する・・、無垢の床板は年月と共に隙間が空いてきます。反り返った木が足に引っ掛かります。けば立った木が足に刺さります。


それらが起こらないようにしたのが複合フローリングで、無垢に樹脂や特殊な加工をしてそういったことがないようにした物などもありますが、それはもう無垢つまり自然のままの木ではありません。





自然のままの材料、自然素材は人間にはとっても優しい材料であり、複合開発された物にはない味わいと風合いと香りがあり私も大好きです。


しかし、自然素材はそれらの長所と共に短所も併せ持っていることを忘れないで下さい。





自然素材じゃないと嫌だ!でも絶対に短所のない物を!と平気で言ってくる人がほんとに、ほんとに多いんです。





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