町外れにある、「レストラン・トンヌールプッペ」は、たいそう料理の味がよく、いつも千客万来。
が、なぜか従業員がいなくなり、お店がつぶれてしまいました。
なぜでしょう。
それもそのはず、シェフであるトンヌールの、つまみ食いをする癖が、どうしても治らなかったからです。
つまみ食い、くらいなら良かったのですが、ついつい全部食べてしまうんです。
同僚のコックさんが、止めようとすると、「食いたいもんは 食いたいんだー」と、投げ飛ばしてしまいます。
迷惑なのはお客さんで、4時間待ってもお料理が来ない。
お客さんが来なくなり、従業員は辞めてしまい、トンヌールはお店を畳まざるを得ませんでした。
それから2年、トンヌールはタクシーの運転手として働き、素敵な女性と出会って結婚。
ふたりの可愛い子どもにも恵まれました。
ある日曜日、トンヌールは家族のために、料理をつくろうとキッチンに立ちます。
かつて有名なレストランのシェフだったとは知らない家族たちを、びっくりさせよう。
が、キッチンからいい匂いは漂ってくるものの、なかなか料理が来ません。
とうとう我慢できずに、奥さんと子どもたちがキッチンを覗いてみると。
あーあ、トンヌールったら、また全部、食べちゃってる。
結婚して、子どもができたら、改心して、お店を始め、人気のお店になるのかなあと思っていたら。
癖って治らないものなんですね。