トトシュとマリーとたんすのおうち | アトリエぽーぽー

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『アトリエぽーぽー』は、創作を楽しむ絵画教室。
講師あけやまひかるは、お月謝袋やレターセットなど、クラフト製品の販売も行っています。
このブログは、生徒さんと保護者さまへ発信していますが、
絵や工作について、みなさまのご参考になれば幸いです。

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ねずみのトトシュが、道端でたんすを見つけました。
まだきれいで、使えそう。
おうちに持って帰って、食べ物を入れておこう、トトシュはそう思い、たんすを背負いました。

ところがたんすの中には、先客が。
てんとう虫のマリーです。
マリーは、このたんすを自分の別荘にしていたのです。

マリーは、おずおずと、このたんすをあなたのうちの庭に置いてくれない?と頼みます。
道端は落ち着きませんもんね。

トトシュは気前よく承知し、たんすを運んであげました。
さらに、お庭ではなく、家の中がいい、というわがまままできいてやり、しかも家じゅうでいちばんいい場所に置いてあげるのです。
壁に飾る絵や、ベッドまで作ってあげ、トトシュは親切ですね。
それだけしてあげたのですから、一番上の空きスペースをトトシュがもらう権利は、当然あるでしょう。
しかし、そこへチーズをしまおうとしたら、マリーは臭いからお断りよ、とぷんぷん怒ったのです。
「きみの別荘、ぼくんちでえらく場所を取っているんだよ。チーズのひとつくらい、置かせてくれたっていいじゃないか」
トトシュの反論はごもっとも。
でもチーズは臭いから嫌だというのも、うなずけます。
チーズじゃなくて、マヨネーズなら、きっとマリーだって快く引き受けたでしょう。

怒ったトトシュは、たんすをまた道端に運び出しました。

が、夜になると、トトシュはマリーが心配でたまりません。
窓から、たんすの様子を眺めていると、まわりをうろつく大きな黒い影。
オオカミです。

たんすを背負って歩き始めるオオカミに、あわてて駆け寄り、たんすとチーズを交換しようと、震える声で持ちかけるトトシュ。
幸い、オオカミはチーズを選び、たんすを守ることができました。

もちろん、トトシュとマリーも仲直り。

めでたしめでたしの友情物語なんですが。

でもこの友情関係は、対等ではないような。
トトシュがマリーを守ってあげている、つまり兄と弟もしくは姉と妹?
マリーはちょっとわがままじゃないですか。
トトシュは人がいい。
結局、たんすをマリーの別荘として、家に置かせてあげます。
ケンカの元となったチーズは、オオカミにあげてしまったので、もうありません。

トトシュは犠牲を払っていますが、マリーは恩恵だけ被っています。
まあでも、トトシュがそれでいいならいいんです。
守ってあげたい存在があるということは、たしかに大きな喜びだし、しあわせですもんね。