あるところに、さんねん峠と呼ばれる峠がありました。
あまり高くない、なだらかな峠です。
季節ごとに、色とりどり花が咲き、秋には紅葉が色づき、ため息が出るほどよい眺めのところです。
しかしこの峠には、忌まわしい言い伝えがありました。
「さんねん峠で ころぶでない さんねん峠で 転んだならば 三年きりしか生きられぬ」
そんな峠で、おじいさんは転んでしまったんです。
真っ青になり、がたがた震えました。
家にすっ飛んでいくと、おばあさんにしがみつき、おいおい泣きました。
布団に潜り込み、ごはんも食べず、病気になり、病気はどんどん重くなり、村の人たちも心配しました。
そんなある日のこと、水車屋のトルトリがお見舞いに来て、
「もう一度転べば長生きできるよ」と言うではないですか。
1度転ぶと3年生きる、それなら2度転べば6年生きる、3度転べば9年生きる。
おじいさんは、さっそくさんねん峠へ行くと、わざと転び、それからは病気もけろっと治り、長生きしたということです。
一休さんのとんち話みたいなお話で、いいですね、こういうお話は。
明るい気持になれます。