ヤクーバとライオン<Ⅱ> 信頼 | アトリエぽーぽー

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絵や工作について、みなさまのご参考になれば幸いです。


ヤクーバとライオン

ヤクーバとライオン<Ⅰ> 勇気
の続編。


そのとき、人間も獣たちも、つぎつぎに植えて死んでいき、あたり一面、砂漠と化していた。

食べるものは、何もない。

ライオンの王者キヴウェは、一族のために獲物を見つけなければならなかった。

キヴウェは、「あの村」に、牛がいることを知っている。

一族を全滅させないため、群れのリーダーとしての責任を果たすため、「あの村」へ行くしかなかった。


村には、まだわずかに牛が生き残っていた。

そしてそこに、あの男、ヤクーバがいた。


キヴウェは、一族のために、戦わなくてならない。

ヤクーバは、牛たちを守るために、戦わなくてはならない


ふたりは、ついに戦い始めた。


ライオンは、何度も男の首や腹や太ももをひっかいた。

しかし、その都度、爪は引っ込められていた。

男は何度もライオンのわきを槍でつついた。

しかし、決してぐさりと突き刺すことはなかった。


ふたりとも、自分が勝とうとは思っていなかった。

お互いに、相手を助けたいと思っていた。

守ろうとするものたちへの、面目を保つための、見せかけの格闘なのだ。


夜が明け、また夜がきた。

ふたりとも、相手を深く深く尊敬する心で、へたりこんでいた。


ライオンは、よろよろと去った。

村人がやってきて、男に「なにがあったんだ?」と聞き、「なんでもないよ、ともだちが訪ねて来ただけさ」と答えた。


瀕死のライオンは、自分の棲家の近くに、牛の塊があるのを見つけた。

それが男からの贈り物であることは疑いなかった。

しかし、信頼を尊ぶキヴウェには、その贈り物には手を触れず、死にゆく誇りがあった。