原作がラフカディオ・ハーンなので、怪談かと思ったら、やはりある意味では怪談なのでした。
だって幽体離脱の話ですから。
乳兄妹のリエンとチュンファンは、深く愛し合っています。
裕福で美貌を誇るチュンファンの父親と祖母は、しかし貧しいリエンとの婚姻は望んでいません。
土地の領主から求婚されると、リエンをなんとか村から追いだそうと目論みます。
チュンファンが、領主と結婚すると聞かされたリエンは、失意の中、村を出ていきます。
あてもなく、ぼんやりと旅をしていると、なんとチュンファンが追いかけてくるではないですか。
ふたりは、豊かな美しい村に着きました。
首尾よく、渡し守の職を得て、子宝にも恵まれ、しあわせに暮らします。
そのうちだんだん、出てきた村がどうなったか、おいてきた父親と祖母はどうなかった、気になってきました。
あるとき、懐かしいその村を訪ねることにします。
チュンファンの家は、出てきたときのままでした。
が、どうしたことでしょう。
チュンファンは、あの日、気を失ったきり、寝たきりになっているというのです。
いったいどういうことなんだ。
リエンが寝室へ行くと、死んだような青白い顔で眠っているのは、たしかにチュンファンです。
しかし、リエンと一緒に3年間暮らした、輝くばかりの気力に満ちた彼女も、たしかにチュンファンなのです。
そのとき、うしろをついてきたチュンファンの姿が光になり、寝ているチュンファンの中に入りました。
そう、チュンファンは、リエン恋しさのあまり、幽体離脱して、魂だけがリエンと暮らしていたのですね。