ルーブル美術館散歩『サビニの女たち』〜誘拐・略奪一転和平へ | 東京都港区でアトリエK六本木(旧白金高輪)を主宰しております石井香生里のブログです。

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ポーセリンペインティング( 磁器絵付け)を中心に、国内外( フランス・パリ、東京・銀座)での展示会出展を中心としたアーティスト活動を行っております。また、少人数制のポーセリンペインティング教室、アトリエKを六本木で開催しております。(教室歴20年以上)

間をあけずにと書いておきながら、また少し間があいてしまいました。
本当に恐ろしい事件が次々起こり、来月上旬に出展予定だった作品も、モチベーションが大分変わってしまった為、今になってモチーフを変更しようかと思い始めるなど、悩み多き日々を過ごしておりました。

ルーブル美術館散歩、今日ご紹介する絵は、前回と同じダヴィッドの名作『サビニの女たち』です。
この絵もやはり歴史的な事件を題材にしておりますが、奇しくも現在起こっている事件と共通する部分もあって、考えさせられてしまいます。

その歴史的事件とは、ローマ建国の雄、ロムルスの命令下、当時荒くれ男の集団だったローマ軍が隣国サビニの若い女たちを略奪、拉致し、後日サビニの軍隊が女たちを取り戻しにローマを攻めた際、女たちが割って入り、サビニの親兄弟と今のローマの夫に和平をもたらしたというもので、この絵は丁度その和平の感動のシーンです。

この絵には実は、ダヴィッド自身の事件も描かれていると言われています…その事件とは、革命政府の左派議員でもあったダヴィットの盟友ロベスピエールが、右派に粛清され、ダヴィッド自身も5ヶ月間投獄され、ギロチンにかかる寸前、貴族出身だった妻の尽力で助かった、というものです。
(ルーブル美術館画集他を参考にしております)

歴史的事件二つ、特に彼自身が関わった事件では、奥様へ、そして留学経験があったローマへの賛辞が込められた傑作と言えます。
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歴史は繰り返すと言いますが、少しだけ現在起きている事件と共通点もあるものの、昔は今よりずっと大らかだった気がします。
そしてやはりこの時代を代表する天才、そしてエリート画家ダヴィッドの、人物像のデッサンや、武具、女性の衣装の精緻な表現、そして何より歴史的な事件の劇的シーンの描写の素晴らしさなど、ひたすら圧倒される絵なのです。

平和への思いを込めて今日は、こちらの絵をご紹介させて頂きました。