本当に恐ろしい事件が次々起こり、来月上旬に出展予定だった作品も、モチベーションが大分変わってしまった為、今になってモチーフを変更しようかと思い始めるなど、悩み多き日々を過ごしておりました。
ルーブル美術館散歩、今日ご紹介する絵は、前回と同じダヴィッドの名作『サビニの女たち』です。
この絵もやはり歴史的な事件を題材にしておりますが、奇しくも現在起こっている事件と共通する部分もあって、考えさせられてしまいます。
その歴史的事件とは、ローマ建国の雄、ロムルスの命令下、当時荒くれ男の集団だったローマ軍が隣国サビニの若い女たちを略奪、拉致し、後日サビニの軍隊が女たちを取り戻しにローマを攻めた際、女たちが割って入り、サビニの親兄弟と今のローマの夫に和平をもたらしたというもので、この絵は丁度その和平の感動のシーンです。
この絵には実は、ダヴィッド自身の事件も描かれていると言われています…その事件とは、革命政府の左派議員でもあったダヴィットの盟友ロベスピエールが、右派に粛清され、ダヴィッド自身も5ヶ月間投獄され、ギロチンにかかる寸前、貴族出身だった妻の尽力で助かった、というものです。
(ルーブル美術館画集他を参考にしております)
歴史的事件二つ、特に彼自身が関わった事件では、奥様へ、そして留学経験があったローマへの賛辞が込められた傑作と言えます。
そしてやはりこの時代を代表する天才、そしてエリート画家ダヴィッドの、人物像のデッサンや、武具、女性の衣装の精緻な表現、そして何より歴史的な事件の劇的シーンの描写の素晴らしさなど、ひたすら圧倒される絵なのです。
平和への思いを込めて今日は、こちらの絵をご紹介させて頂きました。