長谷川和彦 初監督作品
『青春の殺人者』 (1976)
原作:中上健次 『蛇淫』 /製作:今村昌平
キネマ旬報 日本映画ベスト・ワン
水谷豊演じる斉木順は父親名義のスナックで
やとわれマスターとして働いていた。
親に取り上げられた車を取り戻しに実家に帰った時に
一緒に暮らしている幼馴染のケイ子と別れるように言われ
激高し、父親を刺し殺してしまう。
過保護な母親は驚くものの
「お父さんは海が好きだったから」死体を海に沈めて
家を売ってしまって
分譲マンションを買ってふたりで暮らそうと言う。
一度あきらめた大学に行って、時効まで我慢して
いいお嫁さんをもらって…とまくしたてる。
この長いシーンの主役は完全に市原悦子!
大竹しのぶの原点はこれか!と思うような狂った母親を大熱演!
(舞台女優ゆえにカメラ目線で見栄を切ってしまうのだとか)
遂には一緒に死のうと殺されそうになり、母親も殺してしまう。
蛇のような女と言われているケイ子を演じるのは
17才の原田美枝子。度々全裸になります。
水谷豊は24才。こちらも全裸シーンを披露。
じゅんちゃん、じゅんちゃん、ねえ、ねえー、と
耳障りな原田の声があまりに繰り返されるので
聴いてるこちらがノイローゼになりそうでした。
結婚することになった友人に桃井かおり&江藤潤、
そして実年齢がかなり上の地井武男も同級生。
オープニングからなぜか英語歌詞の洋楽が流れてて
違和感がありつつも
いい曲なのできっと有名な名曲なんだろうと思ってたら
ゴダイゴ!全部ゴダイゴ!
モンキーマジック♫のイメージしかなかったけど
すごいミュージシャンだったんだーー
ビートルズの曲を使いたかったけど
総予算の何倍ものお金がかかりそうで断念したとか。
順の実家で死体を見てビビりまくる地井武男のシーンは
予告編にしか使われず、全カット
上の写真のシーンだけの出演になり怒ったそう。
このデラックス版DVDには
本編以上に興味深い
長谷川和彦監督のインタビュー映像がついている。
映画の世界に入るまでの話から
「理由なき反抗」みたいな映画を撮らないかと言われて
本作を撮ったこと
『ジェームズ・ディーン』になってくれと水谷豊に出演依頼したこと
原作者の中上健次に会い、
『蛇淫』が実話に基づく話であることを知り、
事件関係者に会い調査したこと
スタッフの中にいた
相米慎二(のちに『セーラー服と機関銃』など監督)のこと
などなど
長谷川監督のキャラクターもかなり魅力的。
この『青春の殺人者』、多くの人に影響を与えてきている。
今見てもハリウッド映画っぽくて
主演はブラピとウィノナ・ライダー
母親に『ミザリー』のキャシー・ベイツあたりを
思い浮かべながら鑑賞してもおもしろそう。
これから水谷豊の『相棒』 見まーす。