ビクトル・エリセ31年ぶりの映画『瞳をとじて』鑑賞 | 野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

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昨日は、『ミツバチのささやき』(1973)『エル・スール』(1983)などで知られる、スペインのビクトル・エリセ監督(1940-)の映画『瞳をとじて』を観るため、夫と「ヒューマントラストシネマ渋谷」に出かけた。

 

 

 

 

 

私は、ビクトル・エリセ監督の『エル・スール』が好き過ぎて、この映画を観て以来、自分のあらゆる芸術活動を「エル・スール」という名前で行ってきた。すなわち、「アトリエ・エルスールAtelier El Sur」「エルスール・フラメンコ教室Academia de Baile Flamenco del Sur」「野村眞里子/エルスール・フラメンコ舞踊団Mariko Nomura/Ballet Flamenco del Sur」「エルスール財団Fundación El Sur」だ。

 

そして、そのビクトル・エリセ監督の、『マルメロの陽光』(1992)以来31年ぶりとなる映画『瞳をとじて』が公開されると知って、私は「まさか、こんな日が再び来るとは!」と驚きを隠せなかった。

 

大きすぎる期待があったと思う。でも、『瞳をとじて』は期待以上の素晴らしい映画だった。

 

169分の上映時間はけっして短くはない。でも、その一瞬たりとも見逃したくないと思い、集中して観た。見終わった後の心地よさに、しばらく席を立てなかった。本当に宝物のような映画だった。

 

印象に残るシーンもたくさんあった。たとえば、ミゲルとフリオがいっしょにタンゴ「カミニート」を歌うシーン。私は6月に創作フラメンコ公演『タンゴ探しの旅』を開催するが、その関係で「カミニート」も調べて、歌えるようになった。そのため、ビクトル・エリセ監督からエールを送られたような錯覚を覚えた。

 

観に行く前は、ビクトル・エリセ監督の集大成とか遺言のような作品だと思っていた。でも、そうした感情は見終わると消えていた。映画全体にかかわるような、何かもっと大きなメッセージを感じたのだ。

 

たとえば、映画の父リュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』が映し出されたこと、フィルムがもはや邪魔者のように扱われていること、閉鎖されてしまった映画館のことなどは、映画を愛する者にはいちいち突き刺さる。ビクトル・エリセ監督の特徴のひとつとも言える「映画中映画」も、『瞳をとじて』ではさらに効果的に使われていると感じた。また、テレビ番組、スマホ、老人施設といったものがビクトル・エリセ監督の映画に登場したことも、感慨深い。

 

そして、ラストシーンの愛おしさ! ご興味のある方は、ぜひご覧ください。

 

【あらすじ】(少しだけネタバレあります)

元映画監督のミゲルに、未解決事件を取り上げるテレビ番組のディレクターのマルタから出演のオファーが来た。22年前、映画の撮影中に親友であり俳優だったフリオが失踪した謎に迫りたいというものだった。そして、未完に終わった映画『別れのまなざし』のフィルムも紹介したいという。ミゲルはインタビューも、未完の映画の一部の上映も承諾した。このテレビ出演がきっかけで、ミゲルは昔の仲間マックス、失踪したフリオの娘アナ、かつて自分とフリオ両方の恋人だったロラなどとも会い、自分の半生を振り返り始めた。番組放送後、「フリオに似た男が海辺の老人施設にいる」との情報が寄せられた。早速、ミゲルは情報提供者ベレンとおち合い、フリオに会いに行くが……。

 

【キャスト】

マノロ・ソロ ミゲル

ホセ・コロナド フリオ

アナ・トレント アナ ※「ミツバチのささやき」でわずか5歳で主演した女の子

マリオ・パルド マックス

エレナ・ミケル マルタ

ソレダ・ビジャミル ロラ

マリア・レオン ベレン