大沼由紀ライブ『Trazos Flamencos』鑑賞@カサ・アルティスタ | 野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

ブログの説明を入力します。

コロナが新しい段階に入り、クルシージョが目白押しだ。でもほとんど日程が重なっていて、また仕事との時間のやりくりも難しかったため、やっと2つ受講できたのみだった。一つ目は、「フラメンコ界の絶滅危惧種」と言われるコンチャ・バルガスの「カンティーニャ・デ・ピニニ」、そして二つ目は「今スペインで最も旬なアルティスタ」と言われるメルセデス・デ・コルドバのオンラインでの「シギリージャ」だ。(注:メルセデスのクルシージョは来週の月曜まで続く。)

 

他の、東京では日程の合わないクルシージョを広島とか大阪で受講しようかとも思ったが、結局時間調整できなかった。

 

(せっかくお誘いいただいたのに、ごめんなさい!)

 

でも、新スタッフの募集と面接、採用したスタッフ4名の研修が一段落し、「ウクライナ語で学ぶフラメンコダンス」の企画が順調に進み、決算業務が最終段階に入って来たので、昨日は久々フラメンコライブにうかがうことが出来た。大沼由紀さんにお招きいただいた『Trazos Flamencos en Casa Artista』の昼の部だ。

 

雨の中、15時半開演の15分ぐらい前に「カサ・アルティスタ」に着いた。ご案内いただいたのは上手寄りの最前列の席で、左隣がフラメンコライター/カンタオーラの濱田吾愛さん、右隣が元「パセオ・フラメンコ」記者/現「Flamenco fan」管理者の金子功子さんというよく存じ上げている方たちだったので、会話を楽しみながら開演を待った。以下は昨日のメンバーとプログラム。

 

『Trazos Flamencos en Casa Artista』

出演:水落麻理(カンテ)、西井つよし(ギター)、小谷野宏司(パルマ)、大沼由紀(バイレとカンテ)

プログラム:

1.二つの子守唄

2.ブレリア

3.グラナイーナ

4.ロマンセ・デ・サイデ

5.シギリージャ

6.カラコレス

7.ラ・マドゥルガ

8.ブレリア・シルベストレ

 

休憩なしで綴られた8つのシーン。開演前にお隣の濱田さんが、「タイトルの<Trazos Flamencos>の<traszo>とは、氷の上にフィギュアスケートで刻む線や図形のようなもの」と解説してくださったが、まさしくこのライブは、大沼さんがこれまでの人生で舞踏やフラメンコと真剣に取り組まれた痕跡をしっかりと見せた、「大沼由紀の世界」だった。

 

冒頭、水落さんの「ナナ」に続く、大沼さんのフアン・ラモン・ヒメネスの『プラテーロとわたし』の「La arrulladora(子守)」(作曲:マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ)。最初の二つの子守唄のシーンから、一気にアンダルシアへといざなわれた。

 

そして、「ブレリア」も、ギターソロの「グラナイーナ」も、こちらのテンションをどんどん高めてくれて、ハレオが飛びかった。

 

「ロマンセ・デ・サイデ」は、大沼さんのフラメンコとのかかわり合い方をストレートに感じさせてくれるシーンだった。中世の頃からスペインで愛好されてきた「ロマンセ」は、朗読または歌によって披露される叙事詩で――現在は「ソレア・ポル・ブレリア」などのリズムで踊られることもある――、その題材は「戦い」「死」「幽閉」「復讐」といったものを中心に、「恋物語」を扱ったロマンチックなものもあるようだ。そして、その伝承にはヒターノが大きくかかわって来た。大沼さんは、ヒターナの吟遊詩人さながらに、サイデとセリンダの物語を熱演した。

 

大沼さんの黒いツーピースの衣装は、ヒターナの質素な普段着のようでもありながら、レースやボランテがあしらわれかなり凝ったものだった。その衣装を、シーンによって小物なしで、「カラコレス」ではサーモンピンク系のレースのショールを使いながら、また「ラ・マドゥルガ」では黒のマントンシージョを肩からかけて……といった具合に使い分けた。

 

「シギリージャ」、「カラコレス」、「ラ・マドゥルガ」のムイ・フラメンコなこと! そして「ブレリア・シルベストレ」は、お知り合いの方が「ササっと書いたレトラ」に、大沼さんが曲をつけたという珍しいものだった。引っ込みは小谷野さんが粋に一振り踊り、大沼さんとともに退場。濃密な時間を締めくくった。

 

 

 

 

 

大沼由紀さん、そして共演者のみなさま、素晴らしいライブを本当にありがとうございました! 「trazos」のひとつひとつに、心からのオレを!