第21回『しずおか連詩の会in裾野』と京都「オー・ボン・モルソー」の夕食 | 野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

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一昨日は、『しずおか連詩の会』の発表会の日だった。故大岡信先生が、現代詩の可能性を拡げるため、連句・連歌の伝統を活かして複数の詩人たちによって詩をつないでゆくという、世界でも類を見ないような会を1999年に静岡の地で始められてから21年。今年はコロナ禍もあって開催が危ぶまれたが、スタッフのみなさんの情熱とご努力によって無事に開催されることになった。本当におめでとうございます!

 

なお、第10回目からは、大岡先生に代わって詩人で夫の野村喜和夫が捌き手の大役をつとめさせていただいている。

 

11月15日(日)、さまざまな用事を片付けてから井の頭線、JR山手線を乗り継いで品川駅へ。12時4分発の「ひかり」に無事に乗れた。いつものようにシウマイ弁当を食べる。思えば、今年は「新幹線&シウマイ弁当」の組み合わせをほとんどやっていない。(笑)

 

 

 

 

 

当初は三島で乗り換え、沼津を経由して裾野まで行くつもりだったが、ダイヤの乱れがあったため、三島からタクシーで裾野市民文化センターへ向かった。気さくな運転手さんと「しずおか連詩の会」の話をする。「そんな大イベントが裾野で開かれるなんて、すごいですね」と、びっくりしていらした。富士山は雲に隠れて、残念ながら裾野(!)の方しか見えなかった。

 

開場の13時半少し前に到着。ロビーには思潮社のIさんや詩人のOさんなどがいらしたので、ご挨拶。受付でスタッフの皆さんへ「QUATRE」の焼き菓子を差し入れし、会場となる多目的ホールへ。コンサート会場としても使われている、とても立派なホールだった。

 

まず、大岡先生の奥様にご挨拶。毎年欠かさずご出席くださっている。

 

14時、NHKアナウンサー桜井洋子さんによる開演の挨拶。そして県内の小学校で行ったワークショップや3日間の連詩制作風景紹介ビデオが上映された。今年の連詩の特徴は、Zoomによる参加者もいて、「別次元が加わった」こと。

 

そして5人の入場。長谷川櫂さん(俳人)、マーサ・ナカムラさん(詩人)、三浦雅士さん(批評家)、巻上公一さん(音楽家、詩人)、そして最後に野村喜和夫。三浦さんは、制作期間中はZoomを利用されていたが、最終日と発表会には出席された。

 

前半は、一人ずつの感想から。(長いため概要のみ。)

 

野村――オンラインを入れることでひとつ次元が加わった。多様な分野からの豪華メンバーで、極めて面白いスリリングな連詩が巻けた。裾野は大岡さんの足元ということで、いつもと雰囲気が違った。川のせせらぎが聞こえる中での制作は、「水の詩人」である大岡さんからのメッセージのようだった。

 

三浦――外れている人、つまり外れ集めの会(注:異色のメンバーという意味らしい)でうまくいった。大岡さんの考え方に合致している。私以外の4人が「転機」となるようなものを書いた。

 

長谷川――俳句には規則がいろいろある。だが、連詩は何でもできる。Zoomを入れたことで、別の時間・空間ができ、入り組んだ中でできた。

 

巻上――参加できて嬉しい。詩は40年書いていたが、今年詩集を初めて出した。大岡信賞をいただいたので、肩書に初めて「詩人」と入れた。特殊なメンバーなので、この人選でどういう詩ができるか楽しみだった。1詩、2詩、3詩とりっぱな詩ができていたので、「(僕も)詩を書かなきゃ!」と思った。

 

ナカムラ――とてもたいへんだった。皆、やさしくて、私の感覚を尊重してくださった。最初は「明るく」「元気に」行こうと思っていたが、すぐ緊張に変わった。いつもは一人だけで書いているので制作の途中でコメントを言われることはないが、野村さんから「言っている意味が分かりません」と言われた時、木刀で殴られたぐらいショックを受けた。

 

そしていよいよ全40篇(注:5人が8篇ずつ書く)の「詩人たち」による朗読。毎年その迫力に圧倒されるが、今年は巻上さんの音楽も加わり感動の連続だった。

 

15分ほどの休憩をはさんで第2部へ。

 

2部は40篇の詩の解説。著作権上の問題もあると思うので、詳しくは「静岡新聞」とグランシップのHPでご覧いただきたいが、印象に残ったものを数編あげさせていただく。

 

2020年しずおか連詩の会「天女の雪蹴り」の巻

 

小春日和の青空から 三人の天女が

白い山頂に舞い降りて

雪蹴りをして遊んでいる

永劫は一瞬 一瞬は夢 夢は現

新しい命の誕生を祝福しながら

                    櫂

 

長谷川さんによる第一詩。「静岡、三島、大岡さんということで、スケールの大きな詩を作ろうと思った」と長谷川さん。脳裏には百人一首「田子の浦ゆ……」やシェークスピア『マクベス』の魔女のイメージもあったそうだ。サプライズで会場に来ていらした7歳の少年――実は参加者のお一人のご子息――による百人一首の暗唱もあり、大盛り上がりの発詩となった。

 

いい匂いがやってくる

膝から下はどうなってるんだ!

首から上はどうなってるんだ!

                    公一

 

いい匂いとは最初の三詩。それらが素敵すぎて、「どうしよう?」と思いながら作ったという巻上さんの四詩。雲に隠れた富士山のイメージと重なり、ユーモラスでありながら美しい。

 

十二

愛している男の幻影には

何も入っていない

衣をかけて 不在を見ていた

                    マーサ

 

「巻上さんの十一の詩によって感情的に揺さぶられ、どうつないでいいかわからなくなった」として、一時間ほどかかって書いたナカムラさんの詩。しかしここから「生と死」のテーマがはっきりと浮かび上がり、連詩がダイナミックに進む。

 

十三

まるく縁取られた秋の日の琥珀を出て

つぎの世への熱そのままに

きらきらしながら別れましょう

とぼくは言ったのだ 生まれずに済んだわが子たちよ

さあ出発です

                    喜和夫

 

連詩の醍醐味として「予見不可能性(=先がどうなるかわからない)」がある」と野村。ナカムラさんの詩を読んで、シオランの『生誕の災厄』を思い浮かべたという。「反出生主義」、つまり「生まれない方がよかったのではないか?」という考え方だ。「生と死」のテーマが、ここから何人か書き手を渡りながら紡がれた。

 

十五

間違って生まれてきて

間違って生きている

間違って死んでゆくかもしれないけれど

間違ってということじたいが

間違っているかもしれない

                    雅士

 

Zoomでの参加の三浦さんは、対面で制作している4人が真正面から「反出生主義」を受けて「論じている」ことに驚いたという。そして「根本的な矛盾を含んでいるその思想」に三浦さんなりの視点で書いたのが十五詩。

 

こうして連詩はすさまじいエネルギーとともに巻かれ、完成した。16時半終了。四十詩の朗読と解説を聴くことができた観客は、みなさん充足感に満ち満ちた表情で会場を後にされた。

 

私はIさんといっしょに控室へ。毎年発表会終了直後の控室の雰囲気は独特のものがある。4日間(注:コロナ禍の今年はオープンイングパーティーがないため1日短い)制作をいっしょにした仲間との別れに、感極まる方もいらっしゃる。記念写真を撮らせていただいた。

 

 

 

 

 

 

発表会を観にいらした家族とともに裾野の鰻の名店に夕食を食べに行く方、新幹線を乗り継いで栃木県まで戻る方……など、さまざまだ。夫と私は、17時に主催者にご手配いただいたタクシーで三島駅に向かった。毎年「クールダウン」のため熱海などで一泊してから戻るが、GoToキャンペーン中の今年は熱海のホテル・旅館が軒並み満員で、新幹線を逆方向に向かって乗り、京都まで行った。(笑)

 

四条烏丸の定宿にチェックイン。いつもは一人で1万円前後のビジネスホテルだが、GoToキャンペーンのおかげで35パーセント引きの上クーポンまでいただき、実質一人4000円! 

 

夕食はお気に入りのフレンチ「オー・ボン・モルソー」へ。

 

まずはシャンパンで乾杯。後から赤ワイン。

 

 

 

 

 

なお、一昨日頼んだものは下記。リヨン風サラダ。モン・サン・ミッシェル産ムール貝の白ワイン蒸し。これらの前菜はシェアした。

 

 

 

 

 

 

メインはそれぞれ好きなものを注文。夫はアンドゥイエット(臓物のソーセージ)。この店のアンドゥイエットは「日本一」、いや「世界一」かもしれない。

 

 

 

 

 

私は、ステック・フリット。

 

 

 

 

 

チーズ2種。

 

 

 

 

 

食後、シェフとさまざまな話で盛り上がった。私の引退公演『michiyuki』のこと、お店が出展参加された東京の三越百貨店での「フランス・フェア」のことなど。

 

超多忙な日々の〆にうかがった馴染みのフレンチ。すべてがおいしかったです。ごちそうさまでした!

 

そして、「しずおか連詩の会」の出演者、スタッフ、お客様、本当にありがとうございました! お疲れさまでした!