すえちゃんです!

10/19〜21、アトリエファンファーレ高円寺にて上演しました、
風凛華斬第17回公演「flying stage!」
無事に全6ステージを終演しました。

御来場くださった方、
応援してくださった方、
行きたいよと言ってくださった方、

無事に6ステージのフライトを終えたのは、
おひとりおひとりに支えられたおかげです。
本当にありがとうございました。


というわけで。
今回もお芝居の振り返りをしていきたいと思います。


なにから話そうかな。今回は沢山話したいことがあるんですよ。順番に話していきます。

○ナイルくんとのこと。
(そのうち、ハマル役のめぐちゃんが撮影してくれたカッチョいい写真に差し替えます)

実は、台本貰った時はミラを希望してました。
でも、読み込むうちにこの子だって思ったのは、ナイルです。
(あと、実はアメリアでした)


「いじめられっ子」のイメージが強くて、それ以外の役作りに苦労しましたが、彼は好きなものがとことん好きで、得意なことに没頭すると脇目も振らなくて、50m走に13秒かかっちゃって。

そしてとても優しい少年です。

頭の良さを、たとえばマイアと喧嘩して、お兄ちゃんと言い争いになってしまったミラを励ますことに使えたり。


好きな女の子のために一生懸命になれたり、年下の友人であるティコには意外とお兄ちゃんな面を見せたりと、かなり表情豊かなキャラクターでした。

ちなみに、私の中では彼は一人っ子で、きっと物知りなパパと優しいママに愛情たっぷりで育てられてる男の子だと思います。

あと、1回だけ演技じゃなくて、段差から落ちてガチで転んだ回があったんですけど、アンケート見たらお客さん誰にもバレてなかったみたいでドヤ顔。
ナイルでよかった。


さて、そんな彼のことを語りたいのですが、誰かとの関係性の中で語ることなので、ちょっとお話を進めていきます。


○クラウド、カストルと。


ほんとはミラ、アル、ティコとの関係から語らないといけないはずなんですけど、
ナイルの柱が「いじめられっ子」であったので、
クラウドとカストルとの関係からしか語り始められないんです。

台本のト書に、クラウドから強く出られた時に「卑屈に笑う」っていう演技指定があって、これがすごく、私の中でやるのが嫌でした。実は。

だって、卑屈な笑いって、自分が嫌なものから逃げる時とか考えたくない時にするやつじゃないですか。
自分がすごく弱くって、解決できなくて、でも誤魔化す時じゃないですか。

そんな時の自分ってすっごく「汚い」顔してるの自覚できるから、
自ら進んでそんな顔するのがすごく辛かったし、最後まで上手くできたかわかりません。

わかりませんでしたので、
そこは、日によって微妙に掛け方を変えてくださるクラウド役の新勝洋さんとの微妙な掛け合いに任せてました。
最後まで、ちゃんとそんな顔してたかはわかりません。

そんな弱さを持った、何も変えられない男の子でした。


クラウドのことはめっちゃ怖かったです。
新さんの演技の圧がほんとすごくて、ほんとに怖かったんです。
ナイルのいじめられっ子の弱さは、クラウドによって引き出されてました。

お芝居は相互作用だなあと改めて感じております。
楽しかったです。

ちなみに、カストルのことはそこまで怖くないっぽいんですが、
いかんせん一体一の場面がなかったので、そういえば考えたことありません(笑)


クラウドとナイルといえば、やっぱり終盤のタコ殴りのシーンなんですけど、
2回タックルをかますんですけど、それぞれが全然意味合いが違うんです。
一回目は咄嗟に、2回目は本気でぶっ飛ばすつもりで。
その時、ぶつかった分の力で返してくれるんですよね、新さん。

ちなみに、全力タックルしたら、1回だけひっくり返って転ぶくらいガチの力で返って来たことがありました。

最も苦労したのは、見せ場であるそんなシーンです。

普段、殴る蹴るみたいな戦闘行為の演技をガチの殺し合いの場面でしかしてないので、
弱い男の子がキレて何か仕出かす、みたいなのは初めてでした。

されたダメ出しが「強すぎる」。最後までクリアできなかったです。
パンチに腰が入りすぎてる。
ちょっと悔しいです。


ちなみに、ナイルは男の子か女の子か分からないなよなよっ子ですが、2度目の全力タックルの際の雄叫びは、他のセリフより少しだけトーンを低く、
私は経験したことないけど、変声期の訪れ=身体的に大人になるっていうイメージでやってました。



ところで、私自身はいじめに対して「他者をねじ伏せるための暴力」で報復するのは、実は同じ次元まで落ちるような気がして、多くのケースで反対なんですけど、
その考えの代わりに、
「殴っていいのは殴られる覚悟のあるやつだけ」
「人の怒りはチャラにならない。いつかはね返ってくる。その覚悟はあるか?」
っていうメッセージを込めました。

結果「えっ?お前も殴るんかい」みたいな声を聞かなかったのは、
そのメッセージが伝わった結果だったらいいなと思います。


これは販売台本のおまけの「その後メモ」の内容だからあんまり言えないけど、
クラウドがナイルをいじめてた理由は煮え切らない態度に腹を立ててたからです。
彼に嗜虐趣味がある訳ではなく。

ある意味で、ナイルの本音を引き出したのはクラウドなのかもしれません。


あと、これは以前「あの頃の私を救う物語」と書いたことの答え合わせなのですが、

ムカついても納得いかなくても強く出られると言いたいことが言えず、相手に合わせるしかなくて、馬鹿にされては影で泣いていた子ども時代の私は、ナイルを通じて救われたのだと思います。
あの頃の私は何も言えなかったけど、今言って、殴って、思いをぶつけてナイルは前を向けたから、
だから私は前に進めそうです。

どうかナイルの姿を見た人も、そうやって自分自身を救ってくれますように。
全部変わらなくてもいいから、ほんのちょっとでも、すっきりとしてくれていたらいいな。


…暗い話ばっかりしても仕方ないので、今度は夢のある話をしましょうか!


○ミラ、アル、ティコと。

仲良しカルテット!

・ミラ
ナイルは一目惚れですが、末次自身はミラのことを、一緒にいて楽しい、愉快で痛快な女の子だと思いました。
松本海珠ちゃんは、元気いっぱいな憧れの女の子を演じてくれました。
飛行機を見つけて床を転げ回る時の、彼女のデスボイス寸前の叫び声が私は大好きです(笑)

好きなものは好き、やりたいことをやりたいと言う、元気いっぱいでころころと表情を変えるミラは、
ちょっと内向的なナイルには眩しく感じました。

彼女の夢に引っ張られて、ナイルは少しだけ大人になりました。

ちなみに、ミラがナイルに触れてくれるときはいつもすっごくあったかくて優しくて、みすずちゃんのミラって、やんちゃだけどほんとにええ子やなって思いました。

みすずちゃんのエネルギッシュなお芝居が好きです。


・アルファルド
ナイルにとって、ひとつかふたつ年上の、たぶん1番仲良しの同性の友達です。


一対一のシーンがあまりないのですが、優しくてお兄ちゃん気質のアルを、ナイル(多分一人っ子だと勝手に思ってた)はたぶん友達としてもお兄ちゃんとしても好きだと思うんですよね。

だから、手を振り払われるシーンはすっごいキツかったです。

でも、自分が試練を乗り越えたあと、アルが目の前でお義兄さんに刃向かったのは、とっても嬉しかったです。

演じたやわらくんはお芝居を始めたばかりなんですけど、最初はとっても人見知りでしたが、緊張がとけるとどんどんおかしなことをする(褒め言葉)天然さんで、すごく楽しかったです。

また一緒に出来たらいいなー。


・ティコ
幼女みがカンストしてる。
末次自身はティコの言動に終始悶えっぱなしでした。

ティコと絡むとちょっとだけ得意な顔をするナイルくんが、実は楽しかったです。

演じた小泉靖子ちゃんとはもう既に何度かご一緒してて、
そのたびにどんどん可愛くなってく彼女に私は大変夢中ですし、
演技について意外と男気溢れてるとことかも好きです。

しかし、本人が私の過去の言動のせいで私からの「可愛い」を信じてくれなくて、ちょっとだけ困ってます…涙

これからいっぱい伝えようと思います。
はぁ、本当に可愛かったなぁ…


○おまけ、お気に入りのシーンたち

自分は出てないですけど、お気に入りのシーンというのがいくつもあります。

・マリーとアメリア
二人の会話が好き。
実は台本の設定ではアメリアがオビントンを好きで、でもアメリアとマリーは親友、っていう不思議な関係だったんだけど、
今回は役作りの過程で消えたみたいです(笑)

その代わり、マリーとアメリアの友情に焦点が当たって、見ている私個人は幸せいっぱいでした。

親友と恩師の娘を見つけたアメリアの感激は言葉では言い表せないものだったと思います。
台本貰って読んでた時、アメリアってつらい…やりたい…って思ったのは、実はそれが理由だったりします。


○ティアナ様
楽しそうな役ナンバーワン!
嶺咲かおりちゃん、通称がおちゃんの濃いところが存分に活かされていました。
頭を下げるリゲルの良すぎる顔を必死に覗き込むのは、私には思いつきませんでした。すげえなー、がおちゃん。

彼女が出てくると必ず稽古場でも笑いが起きるの、ずるいです。

○オープニング前のオビントン夫妻
アメリアが乗る飛行機を見送るふたりがとても好きです。
風を感じる。

○花占い
あーるふぁーるどさまっとわーたーしぃ♡

貴女はこれから1度この道を離れるけど、貴女には勝てない気がします。

でも私は貴女のいない間に進み続けるから。
もう1回一緒にやれる日に、貴女が貴女の道で何を見てきたかが楽しみでしょうがありません。

真面目なこと言うと痒くなるからもう終わる!(笑)


○この物語について
flying stage!には脚本担当の局長のストーリーの大きな持ち味である「誰かが変わっていくこと」が詰め込まれていました。

役者自身としても、勇気をもらえるお芝居でした。
観てくださった方にも、ちょっとでもいいから、そうであったならと願います。


私やらかしたなって思うのは、あらすじ文作ったのは私なんですけど、
この物語を「大人達に捧げる」って送り出しちゃったことです…

やってみたら、本物の子どもさんたちにも観てもらいたいって思いました。
そんでいろいろとお話がしたかった。かつての子どもと、今の子どもさんとで。

もし次に風凛華斬からflying stage!を送り出すことがあれば、今度はそんなふうに飛びたいと思います。


○終わりに

私は、役をいただくというのは、その役を生きる権利をいただくことだと思ってます。
私がナイルくんだ、って言える権利。

ナイルくん、好きなところも嫌いなところも沢山あるけど、
舞台を終えるというのは、その権利とさよならすることです。
次は私じゃない誰かが演じるのかもしれない。

それは正直少し、いやかなり寂しいです。

それは過去のどんな役もそうでした。
だから、今回のナイルくんとも、このブログ記事をもって、これまでと同じようにバイバイです。

バイバイするって決めたから、語り残しがないか不安です(笑)


でも、これまでと同じように、彼に貰ったものはいつまでも私の中にあります。

それは単純に、次に少年役を演じる時に役立つ技術だけでなくて、
10歳くらいの彼が変わっていった、その姿に29歳の私が助けられるのです。


そうやって、私は前に進んでいきます。
これまでのたくさんの「私」「ボク」「アタシ」から貰ったものを持って。

私もこれから「flying stage!=次のステージへ飛ぶ」します。

だからどうか、

もし今回の「彼」で私を好きになってくださった方は、彼が作っている私をこれからもどうぞよろしくお願い致します。

そして、ずっと私を好きな方。
「彼」はどうでしたか?次はどんな「私」あるいは別の何かで驚かせられるか、楽しみです。だからこれからも、私をどうかよろしくお願い致します。


バイバイ、ナイル。またどこかで君の姿を見るまで。

そして、ここまで読んでくださったあなたへ。

また次のステージでお会いしましょう!

ありがとうございました。

末次由布子


P.S. これからめぐちゃんからたくさんのお写真が届くので、それはアップしていきます。
バイバイはしたけど、私が演じたナイルは私の思い出なので、一緒に振り返って貰えると嬉しいです!
おたのしみにー!