一夜明けまして二夜目も通り過ぎましたが…。
「沖田ほど、死に対して悟りきった奴はいない」
風凛華斬SINプロデュース風真vol.8 HOLD!~the ambitious〜
無事終幕致しました。
ご観劇下さった皆様、
応援してくださった皆様、
本当にありがとうございました。
なんとか4日間はお天気にも愛され、いろいろと嬉しいことも沢山ありました。
本当に本当に、感謝に埋もれそうな4日間でした。
というわけで、恒例のメイキングです。
今回は、劇場で目にするまで伏せられていたもう一役をあわせて2役を演じました!
びっくりしてもらえてすごく嬉しかったです。
というわけで、2人分のメイキングをまとめていきたいと思います。
長いので、コホラでも召し上がりながらご覧ください。
1.小島ちゃん
最初と最後にしか出ないかと思いきや、途中で巻き込まれて怖い目にあったりと、なかなか不憫。
ちなみに、私の速替えのハードルをあげていたのは彼女でした。スカート踏んづけて破ってROBINちゃんに助けてもらうことになったりとか!
最もシビアな着替えタイム・エンディング時に羽織を広げて着せてくれた春陽には感謝しかないです(笑)
彼女のテーマは、もちろん「恋心」。
いろんな形がありますが、彼女のそれは淡い憧れです。講師という立場、含蓄のある言葉、絶対に及びもつかない知識、そういう手の届きっこない人への憧れ。
どうにかなりたいわけではない、ただ紡がれる言葉に、生き方に惹かれて、その人を見ているだけで幸せ。
そんな淡くて幸せな気持ちが、小島ちゃんの恋心です。
私のもう一つの帰る場所!
ご飯食べたり、公園で遊んでみたり、仲良くなることを目標にしていっぱい一緒に過ごしました。
ひょっとしたら、土方さんとよりもずっと一緒にいたかも(特に神楽はね)
小島の淡い恋心は、今まで経験した「手の届かない恋」の気持ちを沢山詰め込んでできています。
出番は少ないですが、「オッキーのそっくりさん」は、私にとってかけがえのない存在です。幸せになってね。
2.沖田くん
そして、そしてそしてそして。
この人へは、私を含めて、本当にたくさんの方が「期待」してるのだなぁと思いました。
夭折した悲劇の天才剣士、子どもが好き、甘いものが好き、いたずら好き、愛すべき人。
…イケメンでないはずがない(笑)
容姿に関しては諸説ありますが、今回はとにかくイケメンでなくてはと思いました。
参考文献のひとつだった「風光る」で、沖田総司は風になりたいと語ります。
近藤さんという尊敬する人を凧に例え、自分はその凧を空高く運ぶ風になりたいと言いました。
沖田総司に恋をする主人公の少女・セイは、この掴みどころのなさ、自由さに苦悩する羽目になるのですが…
病に倒れる悲劇性のみがクローズアップされ、儚さが前面に押し出されることもありますが、
私は、そんな朗らかな、自由な、優しい、笑顔が似合う人でありたいと考えました。
私の沖田総司は、風光るの「総ちゃん」がモデルなのです。
だから、彼を風に例えながら今日までの日を綴ってきました。
ちなみに、池田屋事件の際に喀血したというイメージの強い沖田さんですが、彼がその後もしばらく活躍を続けたことを考えると時期的に不自然であり(喀血するとまもなく死に至る)、
実は池田屋事件の日はたいへん暑い日だったそうで、所謂熱中症で倒れたのではないかという説があります。
(なお、池田屋事件で病にて離脱したという記述自体は、隊士のひとりである永倉新八が残しています)
そして、熱中症になった原因は、その出動の日の昼間に子どもたちと凧揚げをして走り回って遊んでいたからだ、という説があります。
私はこの説を支持して(風光るも同じ展開です)、クソ暑い昼間に凧揚げで子どもたちと全力疾走しそうな人にしようと思いました。
そういう奴とお客様の目に映っていたら嬉しいです。
「沖田ほど、死に対して悟りきった奴はいない」
そんな記述が実際に残っています。
彼が現代を楽しみ、最後まで誇りを、一度きりの青春の記憶を守ろうとしたのは、そんな気持ちからではないでしょうか。
もし病に冒される事なく、函館まで戦い抜いたなら、土方さんに「ついてこい」と言われた時の答えは変わったかもしれない。
役考察はそこから始まりました。
なぜ彼は、後悔はないと笑うことが出来るのか。
病床でこの世のすべてに別れを告げながら生きている彼にとって、現代へ来れた事は言わば冥土の土産。だから順応も早い。
そして、後述の土方さんとの決別。すべてを受け入れたからこそ、守るべき記憶を守る決断をしたのではないでしょうか。
本当は、ひとりぼっちではなく、大好きなみんなに囲まれていつか戦いの中で死にたいと願っていたにも関わらず。
嘘つきでいられるのは、そんな彼のしなやかな強さゆえではないかと思います。
でも、そんな強がりを、土方さんは見抜いてしまいました。さすがですね。
好奇心が旺盛、女の子には少しデレデレしてしまう、そしてモテてしまう(笑)
彼なら現代をどう楽しむだろう。もっともっとたくさんのものを見せてあげたかったです。甘いものもたくさん食べさせてあげたかったです。
ちなみに、一瞬のシーンですが、飛行機への興味を強くしたのは、もっともっとたくさんのものを見たいと願うであろう彼へのラブレターです。
慕わしい、尊敬する、大好きな、沖田くんの2番目のお兄ちゃん。
でも、一番大切なのは、1番目のお兄ちゃんの近藤さん。
近藤さんならどうするか。
きっと彼なら、潔く、笑って、どんな悲劇が待っていたってその運命を受け入れる人だろう。
だったら私はその誇りを守ろう。
大好きなお兄ちゃんと道が分かたれた悲しみを飲み込むのは、彼が仕えるべき人=近藤さんをもつ武士だから。
でも、結局二人とも、形は違っても新選組のことを考えている。考えた結果が違ってしまっただけ。
そして、白黒つけるのは刀で。時代に取り残された馬鹿たちの、魂の殴り合い。
この戦いには、私の男の子の友情への憧れがつまっています。
夕方の河川敷で殴り合いの喧嘩をして、体を草むらに投げ出して笑い合う。
男性からしたらきっとファンタジーでしょうけど、女の子にとって男の子の友情の世界はそんな風に見えてます。
ラストバトルについては、演出から、まるで昔試衛館で稽古していた頃のように、という指定をもらいました。
お互いにまもなく命が尽きる。だったら、剣士として全力で勝負して死のう。
そんな馬鹿達が笑顔で戦っていました。
大切な兄貴分を殺さねばならない事は悲しくて仕方ないけれど、もう会えないと思っていたのに、未来を一緒に観光できて、少しだけど一緒にいられて、そして最後に全力で「喧嘩」できて、楽しかったから。
夢みたいな2日間を過ごして、きっと沖田くんは笑って死んでいけるのだと思います。
…ところで。
風凛華斬ブログにもいずれまとめますが、私だけが局長から告げられた、誰にも内緒にしておきなさいと言われた設定がありました。
沖田総司の幻の必殺技、「四段突き」。
それは、新選組の初期から関わる山南さんの切腹以降、親しい者でさえ裏切りを行いかねない状況の中で沖田が編み出した秘密の必殺技…という設定。
隊内で様々な思想が入り乱れ、幹部でさえ裏切るかもしれない状況。そんな時、近藤さんを守るにはどうしたらいいか。付き合いの長い者達は既に自分の必殺技「三段突き」を知っているため、この技では勝てないかもしれない。
それならば、と。
自らの必殺技が「三段つくものであるという事実」を囮にし、「避けられる三段をあえて打ち、その中に一段、神速の突きを混ぜる」、という技を編み出しました。
四段突きとは、三段突きを知る者…身近な者をこそ斬るための技なのです。
だから。
「今から見せるのは三段突きじゃありませんよ」と告げた時点で、土方さんの死は確定している。
近藤さん個人の兵として存在した土方、沖田。近藤さんを守るはずだった技を、無二の友人であり兄である人に使わねばならない。
そして使えば、必ず相手は死ぬ。
その悲哀を「今から見せるのは…」の台詞に込めなさい、誰にも言わずに。
…という、ひとりで背負うには少し切なすぎる設定を任されておりました。
致命傷を得た土方さんを、後傷ではなく、剣士としての戦いの中で死なせてあげるために、全力で斬らねばなりませんでした。
千秋楽カーテンコールでお約束しておりました、「四弾突き」秘話はこんな感じです。
あ、あと。
一つの目標として、土方さんとの関係を所謂ボーイズラブにしないという目標が、実はありました(笑)
義兄弟であった彼らの絆を表現したかったので、BL的に興奮した、という感想を頂かなかったのは、ちょっと誇りたいです。
3.終わりに
長い二ヶ月間でした。
武藤くんじゃないけど、辛かったけど、楽しかったです。
ずっとずっとやりたかった台本、泣くほどやりたかった役。
私は幸せでした。
また、今回は総勢24名のキャストでお届けしました。
本当に素敵な仲間達。毎回同じ事は思っていますが、本当に本当に、今回も楽しかったです!
また、ダブルの裏キャストのみなさんにはスタッフワークを頑張っていただきました。ほんとはゆっくりしててほしいのだけど、ごめんなさい。
随分たくさんお仕事をお願いしたのに、みんな優しく引き受けてくれて、今回はとっても楽をさせてもらいました。
シングルキャストでありながら制作のお仕事を完遂できたのは、協力してくれたキャストのみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました。殺陣ライブ、二月公演、そしてその先も、これからもよろしくね。
また、スタッフの皆様。
照明の細井さんの青は本当に美しいし、ぐんまさんの選曲は心を踊らせてくれます。
ふるみんの的確なアドバイスに何度も救われ、軽口を叩きながらなんでもこなしてくれたゆーくん。
どなたが欠けても、この公演は成功しませんでした。ありがとうございます。これからもどうかよろしくお願い致します。
そして誰より。
80手に迫る立ち回りを共に演じきってくれた、魂の殴り合いを演じてくれた2人の土方さん。
雨の中殺陣稽古に付き合ってくれた佐山さん。
そして、普段のおしゃべりはあまりなかったけど、
打ち合わせをしたわけでもなく息があって、板の上でコミュニケーションをとる瞬間の楽しさ、幸福感を初めて私に教えてくれた、かっちゃん。
本当にありがとう。
そして。
今も六本木に眠る、沖田総司さん。
きっとあなたが守ってくれたから、たくさんの笑顔が生まれ、大きな怪我もなく千秋楽まで駆け抜けられたのでしょう。
私はあなたが大好きです。多くの人に愛されながらもあまりに早く駆け抜けたあなたの人生に、心を惹かれてやみません。
私はあなたのことが、これからもずっと好きです。
あなたに恋をして過ごしたこの2ヶ月は、私の宝物です。
今度もう一度ご挨拶に行きます。どうかお話を聞いてくださいね。
最後になりましたが。
ご来場くださったお客様、応援してくださったたくさんの方々。
皆様がいなければ、私たちがいかに舞台上を駆け回ろうとも、なんの意味もありません。
あなたがいて私たちがいて、それで成り立つ空間、世界。
私たちを生きさせてくれて、本当に本当に、ありがとうございました。
長い長い記事に最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
コホラ何リットル分でしたでしょうか…(笑)
私はこれから、11/12の西東京市民まつりにおける殺陣ライブ、そして2月の本公演に向けて、あいかわらずの全力疾走フルマラソンを続けてまいります。1週間くらいは給水所にいられるかな(笑)
そして、役者としてではありませんが、12月に1本、制作として関わるお芝居があります。おもてなしをたくさん研究して、もっともっと楽しんでもらえる劇場にしますね。
今後共、応援よろしくお願い致します。
愛をこめて。
風凛華斬副長 制作 役者
沖田総司、小島役
末次由布子