直線型の人生と螺旋型の人生 | 境目研究家@ありさん。

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今日の良い言葉 365】

おはようございます。

雨の倉敷からの配信です。

今年の重大ニュースの一つは
山中伸弥教授のノーベル賞受賞ですね。


早速、今日の良い言葉は、
今年の『致知』の中で最もお氣に入りの記事である
”ハヤブサ”の川口淳一郎氏と山中教授との
対談より。

11月号の特集記事ですが、
この号が発行されたときはまだ、
山中教授はノーベル賞受賞しておられませんでした。

どちらかというと”ハヤブサ”の映画を見た感動で
川口氏のお話メインで読んでいました。

『致知』編集者の方の先見の明。
奇跡の対談ですね。

改めて読むと共感できるお話が
随所にありました。

今日と明日の二回シェア致します。

今日のお話は、山中教授が
同じくノーベル賞を受賞された
利根川進教授に対する質問の話。

不易流行
朝令暮改

上手い具合バランスをとる言葉がありますが、
山中教授の悩み、人事ではなく
小職らにも共通するお話です。

妙に人間味を感じて”ほっ。”とした
お話でした。



では皆様、今年も今日を含めてあと二日。

今日も愛と光と忍耐で
喜びに満ちた一日になりますよう
お祈り申し上げます。


コメント楽しみにしております。
 

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直線型の人生と螺旋型の人生

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【川口】 まさに研究の醍醐味(だいごみ)
を味わっておられますね。


【山中】 臨床だったら予想外のことが起こると、
こりゃもういかんとなりますが、
研究ではそうやって予想外の結果を
楽しめることが大事だと考えています。

それにしても、僕の場合は
研究テーマがころころ変わって・・・・(笑)。


【川口】 私はいいと思いますけどね。
研究テーマは変えるべきじゃないかと思うんです。

そうやってどんどん違う世界を、
違うページを次々に開いていくようでないと、
逆にダメなんじゃないかなと。


【山中】 なるほど。いや、そのとおり、
僕もいま結果としてそう思うのですが、
三十代の半ば頃は自分のポストもまだない段階で、
これから教授職などにトライして
いかなければと考えていた時期でした。

そんな時、
まわりの先生方の話を聞いていると、

「日本では研究の継続性が評価される」

ということがよく言われるものですから、
これは大変だと。

僕は整形外科医に始まって、
僅(わず)か数年で二回も三回も研究テーマを変えている。

かえていないのは嫁さんだけやなぁ。(笑)

なんて思いながら、
これでいいのかなと少し不安になりました。

そんな時に偶然、
ノーベル賞を受賞された利根川進先生の
講演を聴く機会があったんです。


【川口】 もともと免疫の研究をされていて、
その後、脳科学の研究に移られた先生ですよね。


【山中】 はい。途中で研究テーマをころっと変えられたわけです。


それで講演後の質問タイムに勇氣を出して
手を挙げました。

「日本では研究の継続性が大切だと言われますが、
先生はどうお考えですか?」

すると先生は

「一体誰がそんなこと言ったんだ」と(笑)。

「重要で、面白い研究であればなんでもいいじゃないか」

と言ってくださって、
凄く勇氣づけられたことを覚えています。


【川口】 日本ではよく三日坊主をダメだと叱(しか)りますよね。

だけど本当に好きなものを見つけるまでは、
三日坊主で大きいに結構だと思うんです。

もちろん一日でやめちゃダメですが、
三日坊主は「二日頑張った」というところが大事なんですね。

それで三日目に展望が開けなければ、
別の道へ行けばいいと。


【山中】 なるほど。
一日で諦めちゃダメだけど、
二日は死ぬ氣で頑張れと(笑)。


【川口】 そうやってどんどん違う方向へ行けばいいんですよね。


【山中】 おっしゃるとおりで、日本人って
「直線型の人生」
ばかりだと凄く思うんです。

脇道が許されないというか。

ところがアメリカに行ったら
会社も研究テーマもころころ変えるし、
奥さんもころころ変える(笑)。

ベンチャーを起こして失敗したら、
日本では落伍(らくご)者の烙印(らくいん)を押されますが、
アメリカでは逆に、彼は凄い経験をしたんだと評価されたりする。

「螺旋(らせん)型の人生」
とでもいうんでしょうか。


【川口】 直線と曲線という言い方もできるかもしれません。


要は独創性の追求か、
マニュアル性の追求か
という世界の違いじゃないかと思うんです。

宇宙飛行士って子供たちにとって
あこがれの職業のようにいわれますよね。

ただ当の子供たちは何も氣づいていないかもしれませんが、
宇宙飛行士にはマニュアルを完璧に実行する力を求められるんです。

そういう訓練をやり抜いた「学習の頂点」だと私は表現しているのですが、
これは独創性と対極にあるものなんですよね。

だから宇宙飛行士は「自分はこれがいい」と思っても、
勝手にネジを外したりしちゃダメなんですよ。


【山中】 医者の世界も、
言われたとおりをそのままやっていくという究極の世界ですね。

大多数の人はマニュアルどおり。

単にデータ上からの診断をして薬を処方するだけなら、
間違いなくロボットの方が優秀です。


【川口】 宇宙飛行士がやっていることも同様に、
限りなくロボットに近いことを強いられます。

でも山中先生の場合は研究というか、
独創性を発揮する魅力を知ってしまわれた(笑)。


【山中】 確かにiPS細胞ができる前は
好きなことを好きなようにやって
毎日がワクワクという感じでしたが、

できた後はまさにロボットに近いことをしないとダメになっていて、
すべての手順をそのとおりにやらないと認可などを受けられません。

そうすると独創的のドの字もなくなってきて、
専門の人は細胞のことを「製品」とか、
その製品を「出荷する」なんて言いますし(笑)、
随分違う世界を入り込んできたなぁという感じがしますね。



(月刊『致知』2012年11月号 特集「一念、道を拓く」より)