好きなのか、ただの尊敬なのか、自分の感情って意外に分からない。

40年近くも一緒にいて、今更好きもなかろう。慈悲や愛というと大袈裟過ぎる。

そりゃもちろん大事におもっているけれど、こんなに欠けている人なのだ。

わたしは、かのじょという存在に何を見ているんだろうかというお話です。ほろほろ。




1.発達障害


ある方(女性)がつぶやいた。

旦那さんは、ADHDの妻を持ち、周囲のADHD人間の世話をせっせと焼き、ADHD系芸人の日常エピソードをラジオで楽しそうに聴いている。

彼女は、「ADHDが好きなの?」とその夫に聞いてみたそうです。

そしたら、「ADHDが好きっていうか、良いエンジン積んでるのにめっちゃ空回りしてるタイプが好き」と旦那さんから返ってきたと。


ADHDってあまりにキャラがブロードに広がっているので、この人、ADHDだなって決めれない。

かのじょも作家の岸田奈美さんも、料理家の平野レミさんも、窓際のトットちゃんもばりばりに該当者だと思う。


トットちゃんは、授業中に外の人に話しかけたり、登校途中で草花に注目するあまり学校へ行くのを忘れてしまったりという行動を繰り返したため、「問題児」とされてしまい1年生の3か月ほどで学校を退学になった。

ADHD(注意欠如・多動性障害)というのだけれど、注意が無いのじゃないのです。

注意配分がヘタ。1つのことへ集中し易いので、他が落ちてしまう。

昨夜も、かのじょ、テレビ見て笑ってた。

再三、わたしは火をつけているんだよねと念を押してた。「うん、分かってるぅー」と明るく返事。

が、けっきょく煮込んでいたかぼちゃをナベごと丸焦げにした。



米津玄師さんは、子どもの頃から他の人とのコミュニケーションがうまくいかず、

「自分が普通ではない、という感覚を持つことで苦しんだ」と語っている。

20歳の時に高機能自閉症(現在は自閉症スペクトラム障害:ASD)と診断され、自分のコミュニケーションの難しさに対して納得できたという。

俳優のトム・クルーズも発達障害を抱えていることで有名です。

彼の持つ発達障害は、限局性学習症(SLD/LD)のうち、ディスレクシア(読み書き障害)。

どうやってセリフを覚えるのかしらと、彼を見るたびにかのじょは首をひねってる。

そう、かのじょもディスクレシアだ。黒柳さんも計算障害と読書障害がある学習障害者。

いくつかの障害が重なって行く。


良いエンジン積んでるというより、何かの才能を発揮するために、脳は他の機能を犠牲にしている。

なので、自身の難しさに対して工夫を行う人たちともいえます。

その一生懸命さが、冒頭の方のお話になるのかと思う。

旦那さんは、発達障害者の健気さ、一途さにほろほろしてるんだろう。

嘘や虚栄が無い素な相棒ですもの。応援しまっせ!と。




2.レジリエンス


心理学でいうレジリエンス(回復力)とは、不利な状況やストレスに適応する能力のことをいいます。

誰だって、学校で虐めを受けたり、上司に罵倒されたり、病気に成ったり、仕事や家族を失ったりする。

でも、逆境を超えて行く力は、誰もが同じわけではない。

最近こんな研究が報告された。

https://gigazine.net/news/20240909-greater-mental-resilience-live-longer/



データ追跡された人は、米国の50歳以上の1万569人でした。

平均12年間の追跡期間中に3489人が何らかの原因で死亡した。

レジリエンスは、「忍耐力」「落ち着き」「目的意識」「自立心」「1人で向き合うべき経験があるという認識」といった項目で測定され、スコアは「0」~「12」のスケールで表された。

結果なんだけど、「レジリエンスのスコアが高いほど全死因での死亡リスクが低下した」。

しかも、この関連性は特に男性よりも女性で強かった。

レジリエンスのスコアに基づいて参加者を4分割すると、最もレジリエンスのスコアが低い25%の人々と比較して、最もスコアが高い25%の人々は今後10年間で死亡する確率が53%も低いという。

この傾向は、糖尿病・心臓病・脳卒中・がん・高血圧といった本人が持つ病気について調整した後も統計学的に有意だったし、喫煙やその他の健康関連行動を考慮しても持続した。


で、研究チームはこうまとめた。


「人生の意味・自己評価による健康状態・社会的支援に対する満足度など、さまざまな要因が心理的なレジリエンスに影響する可能性が指摘されています。

これらのポジティブな感情を引き起こすことで、心理的レジリエンスの保護効果が高まり、成人のメンタルヘルスに蓄積された逆境の悪影響が緩和される可能性があります。

今回の知見は、死亡リスクを軽減するための心理的レジリエンスの促進を目的とした介入の、潜在的な有効性を強調するものです」と研究チームは述べている。



心理的レジリエンスの保護効果と言っている。そう言われたら、そうなのかもしれない。

わたしが、納得したのは、測定スコアで採用された5つの項目自体でした。

「忍耐力」「落ち着き」「目的意識」「自立心」「1人で向き合うべき経験があるという認識」を評価項目としていた。

弱っちいかのじょは、自身が発達障害を帯びている。

ひどく難儀な生なんだけれども、忍耐力があり、落ち着いていて、目的意識もはっきりしています。

わたしという夫に依存することはなく自立心が高いです。

いつも、苦難に1人で向き合ってこないといけなかった生でした。

しかし、驚くほど優しく聡明なのです。

きっと、あなたも会えば、納得されると思う。

わたしが、かのじょをすごいなって思ってたことが、そのものずばりレジリアンスの測定項目になっていたのです。

おお、、かのじょはかなり長生きするでしょう。



3.健常者とはなにか


わたしは、いちおう、外見に傷もないし、平均身長はある。

人並に走ったりする。読み書きもする。スラスラ話もする。聞くこともいちおう、できる。

勉強も、するように成ってからは出来た方だと思う。

で、抜きんでたいと足掻くことはあっても、この平均男は満足するってなかった。いつも、競い、評価を気にして来た。



発達障害者は、人間たちが描く正規分布の平均に居れない。隅っこ。

かのじょたちは、人付き合いが苦手だったり、普通に出来ることが出来ないので白い目でみられ易い。

ムレは、ハズレ者を迫害するので、かれらは、目立つことを避け、認められたいなんて諦めてる。

この世に居場所の無いかのじょたち。

生まれながらのハンディを抱えていて、どうにもその定めから逃げれない。

じっと耐えるしかないから、結果、レジリエンスが高いでしょう。



片や、偏った脳は1芸に秀でてしまう。

脳内の1か所残して、他をすべて焼き払ってる。

脳は、代替して、その1か所にリソースすべてを集中する。

黒柳さんや米津さんがたまたま優秀、なのではないのです。多大な犠牲の上に生きている。と思う。



しつこいけれど、わたしは心技体、ほぼ平均的な男だと思う。

負けまいとするから、引け目というのがあまりない。平均に産んでくれた両親に感謝しかない。

でも、わたしは競い、比べるのでいつまでも自身を受け取れない。

忍耐して衝撃を超えて行く根性も、たぶん、無い。

発達障害を抱えた者たちの方が、辛い分、レジリエンスが高まるように思うのです。

長生きすれば良いとも思わないけれど、地に足着けて、自分に添って生きれるのは素晴らしい。



わたしは、この研究が使った評価指標(スコア項目)を見て、はじめて、じぶんがなぜかのじょをリスペクトしていたのかを知った。

ええ、わたしには、「良いエンジン積んでるのにめっちゃ空回りしてるタイプ」を応援し励ますという地味な役割が与えられていたことを知った。

健常者とは、障害者という存在を前提にしている悲しい言葉です。

お互いが必要であって、ああ、、わたしはかのじょを通してじぶんを受け取っていたのです。




P.S.


手嶌葵「こころをこめて」

https://www.youtube.com/watch?v=nLjVIqI2Ows

ああ、、これは癒しの調べだ。

歌声で身体の中の緊張や不安がドロドロと涙と一緒に流れて行くような感じがします、という書き込みがあった。



葵さんが心込めて祈ってる。

その繊細な響きがわたしを包む。

言葉ひとつひとつを丁寧に歌ってゆく、生きて行く。

そんな姿にわたしは拘りだったり、悔いだったりがすっと消えて行く。わたしは、そうしてほろほろになる。


誰にとってもこころ辛い時、励ましは嬉しい。

悪戦苦闘するじぶんを受け止めてくれているんだなと思うだけでも、救われる。