幼馴染みにはアゴから
首元には赤い痣がある…。
だから子供の頃から
タートルネックを着たり
大きなマスクをしたり
マフラーをしたりして
人から見えない様にしていました…。
私とは幼馴染みだから
私は色の違う皮膚を知っていました…。
一度、その事を母ちゃんに聞いたら
「人の気にする事や嫌なことは言っては駄目だよ…。」
そう言われました…。
幼いながらその痣の事は
話しをても聞いても駄目な事を感じました…。
幼馴染みは夏になっても
タートルネックを着て
首を亀の様に引っ込めて
痣の所にいつも掌を置いていました…。
小学校ではプールには絶対に入らず
日陰でみんなの姿を見ていました…。
私が幼馴染みだからこそ
知っている彼の辛さ…。
その姿を見てたら何だか私
プールで泳ぐ事も素直に楽しめない…。
小学四年生になって
ある体育の時間
タオルを首に巻いている幼馴染みに
意地悪な男子が
いきなりタオルを引っ張った…。
慌てる幼馴染みの姿を見て
笑う意地悪な男子…。
幼馴染みは地べたに這いつくばり
泣き出してしまう…。
私は意地悪な男子から
タオルを奪って幼馴染みに渡す…。
私の血管を通る血液が
沸騰してるのが分かった…。
こんな事が許されてたまるか!
意地悪な男子の頬を
幼馴染みの痣のある場所を
思い切り掌で引っ叩いた!
意地悪な男子は後ろに
倒れて泣いている…。
意地悪をされた幼馴染みと
意地悪をした男子が
地べたに座って泣いていた…。
それを見て引っ叩いた私も泣いてしまう…。
人を引っ叩くっていうのは
こんなにも痛くて
こんなにも切ない…。
血液が沸騰しても
もうこんな事をしてはいけないと
思いました…。
殴っても世の中は何も変わらない…。
だって痛さはいつか消えちゃうから…。
でも心の傷は一生消えない痛みだから…。
幼馴染みはそのまま家に帰りました…。
意地悪な男の子は医務室に向かいました…。
私は職員室に呼ばれて
担任に大きな声で怒られました…。
その時にまた私の血管の中の
血液が沸騰してしまう…。
「じゃ、先生、痣を消してくれますか?」
その一言を言うと涙が
溢れて止まんない…。
涙腺の中の涙まで沸騰してしまう…。
すると副担任の女性の先生が
「落ち着いて…。」と私の腕を
引っ張って廊下に出した…。
「人と違う体の一部を言うのは確かに良くないね…。」
私は副担任を睨む…。
もうそこには先生と生徒の垣根は無い…。
人間と人間との思い…。
「みんなと何処が違うんですか?痣があると一生、隠して生きないといけないんですか!そんなの絶対に可笑しいです!」
一気に言いまくってしまった…。
もう感情を表現して
戦うしかないと思った…。
幼馴染みの気持ちを考えると
もう先生からどう思われても
良いとさえ思ったんだ。
先生とは二年間だけの関係…。
でも幼馴染みとは
一生の付き合いと思ったから…。
「あの時、ママ凄かったんだよ…。」
夫が昔話を娘に話しています…。
時折、笑いながら話をします…。
夫と結婚したいと思った時に
私は一度、夫から断られて居ます…。
「付き合いだけなら良いけど、結婚して、もし子供に痣があったら可哀想だから」と…。
でも、私はあの時と
同じ気持ちになって言ったんだよ…。
痣あったって良いじゃない…。
もしあったら貴方がいるじゃない…。
貴方は色んな方法で
子供を守ってくれるでしょう?
そう言うと夫は静かに天を見上げた…。
こぼれそうな涙を堪えていました…。
娘が生まれると夫は体中を見渡す…。
すると夫が大きな声を上げた…。
「やっぱりあった!俺のせいだ…。」
そうやって顔を掌で覆う…。
私は夫の掌をそっと開いて言いました…。
「これは蒙古斑だよ…。成長したら消えちゃうよ…。」
そう伝えると夫はホッとした顔して
大粒の涙をこぼして泣きました…。
私も泣いて
娘も二人の泣き声で泣きました…。
娘が生まれた日
三人で初めて泣いた日です…。
こんな嬉し涙は忘れる事なんて出来ないよ…。
もう夫はタートルネックも
タオルもマスクもしません…。
堂々と生きています…。
夜、中々眠りに就けない時
よく夫の痣の上に掌を置いて
夫の痣と話しをします…。
「よくがんばったね!」
そうしっかりと伝えます…。
夫には私の知らない
数え切れない心の傷がある…。
夫を見ていると
心の傷は消えなくても
周りの計らいできっと
少しずつ小さくなっていくんだと思う…。
「心を燃やす!」
って人は言うけど
それはきっと困った人を助ける時に
一番相応しい言葉だと
私は勝手に
身勝手にそう信じてしまうんだ…。
「人間…」と言う言葉は
人と人との間にある気持ちを
思いやるって意味だと私は思うんだよ…。
夫に痣があったからこそ
人の痛みにも気がつけた…。
そう思うと夫の痣が
私と娘を家族にしてくれたとしか
思えないんだ…。
痣が三人を繋げてくれたんだよね…。
夫の痣がこんなにも今、私
とっても愛おしいんだよ…。