長いお別れの感想認知症を患う父が亡くなるまでの10年の家族の物語。8つの短編で構成され物語の中で父はひとつまたひとつと何かを失っていく。記憶、言葉、知性、体の自由壮絶な介護の現実を柔らかいユーモアで優しく包まれて表現されている。悲しい結末だがただ悲しいだけではなく何か温かいものを心の中にそっと残していってくれる。時間をかけそれでも最後は突然やってきてしまうがお別れで何もかも失くしてしまうわけではない。最後に残ったものを大切に忘れずにいたい。
読了日:5月16日 著者:中島京子
ジウ〈1〉―警視庁特殊犯捜査係 (中公文庫)の感想児童誘拐事件と立てこもり事件これら2つの事件は密接な繋がりを見せ次第に巨大な犯罪が露見していく。犯人にさえ感情移入してしまうが犯人の説得、心を閉ざした被害者の心を開くことを得意とする美咲と機動隊出身で強行を得意とする基子対照的な2人。そして謎の人物の存在が明らかになる。国籍も住所もない中国人の少年ジウ。謎だらけのジウと2人はどう関わっていくのか2巻にいきます。
読了日:5月17日 著者:誉田哲也
ジウ〈2〉―警視庁特殊急襲部隊 (中公文庫)の感想連続児童誘拐事件の黒幕やジウを探すため実行犯の取り調べを続ける東と美咲は新世界秩序という思想に辿り着く。そして基子は特殊急襲部隊から所轄へ移動。全容が明らかでないミヤジの生い立ちこの3つの視点で物語が展開していく。フリーライターの木原に仕組まれジウと対決するが一方的に打ちのめされ今は不動産王となったミヤジに洗脳され新世界秩序に取り込まれてしまう。そして信用金庫での人質立てこもり事件で出動していたSAT一小隊が犯人の爆破により全滅。補充として基子が再びSATに。どうなってしまうのか3巻にいきます。
読了日:5月18日 著者:誉田哲也
ジウ〈3〉新世界秩序 (中公文庫)の感想歌舞伎町一体を配下の人間達で占拠したミヤジ。首相を人質に新宿に治外法権の独立区を認めるよう日本政府に要求する。壮大なクーデターを警察上層部の関与で知らないうちに利用されていた基子。そして基子の元上司でSATの部隊長小野との密会により大きな陰謀の存在を知る東と美咲。警察対新世界秩序の息詰まる攻防や、その裏での裏切りや駆け引き。ラストで美咲の愛が基子の頑なな心を溶かしミヤジ、ジウ、基子の対決を経て温かな結末を迎える。圧倒的なスケール、スピード感ある展開に大満足。
読了日:5月18日 著者:誉田哲也
闇から届く命の感想過酷な勤務実態に耐えながらも使命感をもって働く助産師たちの姿と産婦人科病院で繰り広げられる様々な妊婦たちの出産を描かれている。美歩は6年目の助産師。美歩が勤めるローズ産婦人科病院は助産師が4名院長以外の医師は1名出産が昼夜を問わず病院での過酷な医療現場。ローズ病院で繰り広げられる様々な出産にサスペンスも加わるが生まれてくる命を無事に取り上げようとする助産師たちの熱い思いに圧倒された。
読了日:5月19日 著者:藤岡陽子
浮遊の感想脳研究の最前線を走るエリート医師の本郷は交通事故に遭い同僚の医師らによる手術により自らのプロジェクトの実験台になる。術後目覚めたと思った本郷は自らの研究室の水槽の中で存在していた。本郷は既に死亡として葬儀まで執り行われていた。脳だけの存在となった本郷、意識だけの存在は生きていると言えるのか意識だけの存在になっても生きたいのか。人は何をもって死とするのか?人間が人間であることの根本を問いかけられている、人間の尊厳とはと考えさせられる。
読了日:5月19日 著者:高嶋哲夫
歌舞伎町セブン (中公文庫)の感想ジウから6年後の新宿歌舞伎町そこで囁かれる歌舞伎町セブンとはいったい。歌舞伎町の再開発計画に参加した後の帰宅途中で町会長が変死、病死と判断されるが…。ビルを買い取る正体不明の企業は、その裏に隠された驚愕の真実。何が正義で何が悪なのか色々な人や事柄が複雑に絡み合う。東警部補、ミサキと登場しミサキはもしやあの人なのか?早く知りたく歌舞伎町ダムドにいきます。
読了日:5月20日 著者:誉田哲也
歌舞伎町ダムドの感想歌舞伎町で人質籠城事件が発生犯人は東警部補を呼ぶよう求める。犯人は素直に投降するが何も話さず検察へ送られる際自殺してしまう。犯人の自殺で事件は終結しようとする中疑問を感じ単独で調べる東が狙われる。物語はジウに心酔するダムドという殺人鬼、東を影で守る歌舞伎町セブンの欠伸のリュウこと陣内とミサキが中心となり展開していく。ミサキの正体も明らかになり一応の決着は見せるが新世界秩序が存続している。早く続きを知りたい。
読了日:5月20日 著者:誉田哲也
天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 (新潮文庫)の感想戦が始まれば多くの民が死に新ヨゴ皇国は滅んでしまう、これを回避する為ロタとの同盟を目指し一人海を渡ろうとし志半ばで亡くなったと思われているチャグム。バルサはチャグムが生きていると知らされチャグムを探しロタ王国に入る。様々な人から情報を得ていくうちにタルシュ、ロタの複雑な政情と陰謀が明らかになる。チャグムは新ヨゴ皇国から疎まれ翻弄されながらも国と民を戦から救う道を見つけ出そうとする。困難な道だがバルサの助けを得て進んでいく。バルサとチャグムの再びの出会いには感動しました。
読了日:5月21日 著者:上橋菜穂子
インデックスの感想姫川シリーズの短編集。池袋署強行犯捜査係担当係長・姫川玲子。所轄に移動し扱う事件の幅は広がる。行方不明の暴力団関係者、巧妙に正体を隠す詐欺犯、売春疑惑、路上での刺殺事件など。姫川は本部復帰のチャンスを掴む。姫川シリーズを未読で読んだが充分楽しく面白かった。姫川の直感とも言える捜査をし成果を上げていくのは良かった。
読了日:5月21日 著者:誉田哲也
硝子の太陽N - ノワールの感想沖縄で米兵の車が老人を轢き殺したシーンを撮った写真がネットに流出全国で基地反対のデモが起こっている中歌舞伎町セブンの目である上岡が殺害される事件が起きた。新宿署の東は左翼の矢吹の取り調べを担当するが次第にデモの裏にある大きな思惑が隠されている事を知る。陣内ら歌舞伎町セブンのメンバーは上岡を殺害した犯人の正体を探り始める。東と歌舞伎町セブンの微妙な関係が今作で更に近づき新世界秩序が関わっていたのかが明らかにならずまだまだ続きそうな終わり方だった。東とガンテツの確執が描かれていて今後の2人の関わり合いも楽しみ
読了日:5月22日 著者:誉田哲也
硝子の太陽R-ルージュの感想捜査一課に復帰した姫川は祖師谷での一家惨殺事件を捜査、姫川が現場付近で出会った男が殺害される。その男はフリーライターで殺害される直前新宿署の東と会っていたことから姫川は東を訪ねる。姫川達の捜査を描くのと並行して元米兵らしい男が日本滞在中に殺人を犯し逮捕されずにアメリカに戻ったが再び日本に戻って来る様子が語られていく。そして姫川がこの男と交錯するのか。姫川班のメンバーはそれぞれ移動となり唯一菊田が主任に昇任して姫川班に戻っている。そして井岡も捜査一課となり姫川に付きまとっているのが愉快だった。
読了日:5月24日 著者:誉田哲也
ドラゴンフライ (単行本)の感想多摩川河川敷で内臓を奪われ全身を焼かれた身元不明の死体が発見される。手掛かりは死体に残されていたトンボのペンダント。警視庁捜査一課の鏑木班は僅かな手掛かりを頼りに捜査する。被害者はダムに沈む町飛龍村出身という事が判明。ダム建設に関わる汚職事件20年前の未解決事件などが絡み事件は更に複雑になっていく。飛龍村での巨大な陰謀の陰。自然に囲まれた飛龍村トンボの生息地でトンボが鍵となる。事件の裏に隠された悲哀の物語。
読了日:5月24日 著者:河合莞爾
ダンデライオンの感想廃墟となった牧場の中にある巨大なサイロ。そのサイロの空中に鉄パイプで刺された女性の死体が浮んでいた。今作は鏑木班の若手刑事・姫野が解決する。姫野の複雑な家庭環境とこの事件が次第に見事に繋がっていく。そして事件に首を突っ込んでくる公安や被害者の過去と様々な伏線が絡まりながら展開していく。鏑木特捜班シリーズは、どれも面白い。
読了日:5月24日 著者:河合莞爾
炎上チャンピオンの感想プロレスが自粛されて10年になる日本元プロレスラーが次々に襲われる事件が続く。事件を起こし服役していたレスラー小次郎が出所する。日本からプロレスが消えアメリカに渡った人気レスラーのファイアー武蔵も帰国そして小学生児童の誘拐事件が起こり、そこに真っ赤なフェラーリで現れた男とマスクをした長身の男それに巨大を原チャリに乗せた男が現れ誘拐された子供を救い出す。伏線だらけのなかで小次郎の事件は冤罪、真犯人は?驚愕のラストが今作も面白かった。
読了日:5月25日 著者:横関大
エミリの小さな包丁の感想職場の上司が妻子ある男性とは知らずにつき合い妻や職場の人に知られてしまい仕事もお金も居場所もなくなった。エミリは15年ぶりに母方の祖父大三の家を訪れる。そこでの素晴らしい出会い。祖父や友人達はエミリが訳ありでこの町に来た事に気付いているがエミリが自分から話すまで尋ねようとはせず、知られてしまってもまるで何もなかったかなたように変わらない態度で接してくれるエミリは傷つくが大三らの温かい心に支えられ前向きに歩き始める自分の存在価値や人生の価値は他人に判断させてはいけないと心に沁みる言葉がちりばめられている。
読了日:5月25日 著者:森沢明夫
貌(かお)なしの感想香の父親が行方不明となりいとこの響子の協力を得て行方を捜し始める。父親の行方を捜す話と行方不明の父親の半生が並行して描かれ様々な謎が解き明かされていく。父親の行方とともに香自身の秘密も明らかになり父親に隠された謎と無戸籍だった父親の半生が見事に繋がっていく。法的に存在しないと宣告された男性の過酷で無慈悲な人生、透明人間と言われた自分には貌がない。無戸籍の問題を改めて考えさせられる読み応えのある内容だった。
読了日:5月26日 著者:嶋中潤
やがて海へと届くの感想真奈とすみれは大学時代からの親友。3年前の大震災の前日すみれは一人旅に出てそのまま行方不明になる。すみれの恋人や家族も彼女の死を受け入れ始めているが真奈は未だに戻ってくると思っている。世の中は普通に回っていく誰も好きになれないと思ってもいつの間にか恋は訪れ日々は続いていく。死により世界が隔たってしまったふたりの間にほんの一瞬思考が交錯する。不意にいなくなった大切な人は今でも旅を続けている、そして自分もいつかそこへ行く。気持ちの底から温かくなった。
読了日:5月26日 著者:彩瀬まる
女たちの審判の感想誘拐殺人の罪を犯した囚人を巡る物語だが主役は獄中で死刑囚と関わる刑務官たち。事件発生から公判、刑の執行そして後日に至るまで20年という歳月の中にいくつものドラマがあるが判事の下した極刑の判決。拘置所という閉ざされた世界の内側と厳格さを要求される勤務の内容がリアルに、そして外部との便宜を図る違法なハト行為や囚人との間に芽生える友情そこに生まれる人間ドラマが緊張感たっぷりに描かれている。
読了日:5月27日 著者:紺野仲右ヱ門
スクープのたまごの感想入社2年目週刊誌部署に配属となった日向子。日向子が恐る恐るタレントのスキャンダルや事件取材に奮闘。リアリティある感動と日向子の成長する過程が見られる。連続殺人事件のスクープの話や後半から大きく動き出す展開にドキドキしていく。記者達の奮闘や入念な下調べ身体を使っての張り込み裏取りそして掲載に値する記事のみを載せている。週刊誌業界の内情を知ることも出来るお仕事小説。連続女性殺人事件の真実を追い続けるミステリー要素も含まれていて面白かった。
読了日:5月27日 著者:大崎梢
こんにちは刑事ちゃん (中公文庫)の感想敏腕刑事・羽田は殺人事件の犯人に銃撃され命を落としたはずが目を覚ますとなんと彼は後輩刑事の鈴木慎平、鈴木家の赤ちゃんに生まれ変わっていた。羽田はものすごく可愛い赤ちゃんの体と切れ味鋭いおっさんの推理力で周囲で巻き起こる難事件に挑む。50歳のおっさんが赤ちゃんにというのがたまらなく面白い。母親の目を盗んでケータイで赤ちゃんらしい仕草を調べたり、あまり泣かず親を楽させようとしたら逆に心配になる親。赤ちゃん言葉で事件を推理していくなど笑いあり涙ありのハートフルミステリー。続編が楽しみ。
読了日:5月28日 著者:藤崎翔
季節はうつる、メリーゴーランドのようにの感想冬子と夏樹は学生から社会人へと年月を重ねていくが自分の置かれた立場や環境が変化していく中で抱く様々な感情には共感を覚える部分も読んでいて多々あった。2人の関係は歪で嫌な場面もあるが就職し自立してある時ふと漠然とした心細さを抱く瞬間だったり親の庇護の下でぬくもりに包まれた記憶が呼び起こされる瞬間だったりそれはまるでぐるぐると切り替わるメリーゴーランドのよう。ラストのキセツで想像していなかった事実を示され冬子と夏樹の過ごした美しい季節を思い出すとやるせない気持ちになる。
読了日:5月29日 著者:岡崎琢磨
ポイズンドーター・ホーリーマザーの感想全6編の短編集どの話も歪んだ母娘関係を軸とした話。自分の考え育て方を強要する母、自分の行き場のなさを母の所為にする娘。どの話も後味が悪く他人事と割り切れる話でもない。じんわりと怖さを感じた。久々に湊かなえさんのイヤミスを堪能出来た。
読了日:5月29日 著者:湊かなえ
ノッキンオン・ロックドドア (文芸書)の感想ノッキンオン・ロックドドアという探偵事務所に2人の探偵、不可能探偵の御殿場倒理と不可解探偵の片無氷雨。相棒でありライバルの2人はそれぞれの得意分野を活かし数々の事件を解決。7編の短編で登場するかつて同じ大学のゼミだった糸切美影そして2人が関わる事件の担当者として協力する女刑事穿地決。ある事件が元でそれぞれの道を歩むことに。倒理と氷雨は探偵、穿地は刑事、美影は犯罪を教唆する側に彼らの過去も気になる。
読了日:5月31日 著者:青崎有吾
FEEDの感想冒頭から結末が書かれていて何回も読むのを止めようか迷った。嘘が充満し盗みが横行信じられるのは自分だけ。社会から弾き出された人間ばかりが住むシェアハウスでの友情。哀しくて辛く読み進めていくのが非情に辛いのだが読者を惹きつける力のある作品。心を深く抉られる内容だけに辛かった。
読了日:5月31日 著者:櫛木理宇
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