塩狩峠 (新潮文庫)の感想キリスト教信者の母を持つ信夫はキリスト教を嫌う感情を持っていたが母の信仰や親友の吉川の妹のふじ子に惹かれキリストへの関心を抱くようになる。やがて信夫もキリスト教となり日曜礼拝の説教師として教会に奉仕する。ふじ子との結婚を決意し結納の為札幌に向かう鉄道が塩狩峠を越えようとした時信夫の乗っていた車両の連結部分が外れる事故が発生。信夫は乗客を守る為自らレールに飛び降り自分の体を犠牲にして汽車を止めようと列車の下敷になるイエスの愛を実践し自らを犠牲にする姿他者の為に犠牲になり命を落とせるか。信夫の姿に心を打たれた
読了日:9月17日 著者:三浦綾子
ふたり狂い (ハヤカワ文庫JA)の感想ある小説の主人公と同姓同名の男が自分の事が描かれていると思い込み女性作家を刺してしまう。各短編に登場する人物や事件が複雑にリンクする。そして時間も前後するので何が何やらとなりそうだがスピード感ある内容にグイグイと読まされる。表題作ふたり狂いは妄想を持った人と親密になったり共同生活をしたりしている内に正常な人までも妄想を共有する事になる。感応精神病という。この中に出てくる本当に狂っているのは誰なのか?にはゾクッとし謎も加わるので面白かった。
読了日:9月17日 著者:真梨幸子
サンザシの丘の感想殺人犯の城島清澄の行動を追う内に次々と明るみに出てくる中国残留孤児の問題、親に見放された孤児の問題、施設の運営の実態問題、戸籍売買の問題そしてパニック障害を持つ刑事の不安。城島の生い立ち殺人を起こさなければならない事情を知る内に刑事倉沢の中に芽生えるやるせなさ。自分の本当の名前すら知らず自分が誰なのか何者なのか解らない母親の腹から生まれ出た男。私は日本人であって日本人でない、それどころか何者でもないと語った男の最後の姿。中国残留孤児、児童虐待を盛り込んだミステリー。
読了日:9月18日 著者:緒川怜
つづきの図書館の感想山神桃は両親もいない40代の女性。今まで一度も会ったことのない伯母が入院した事を聞き伯母の世話をする為に生まれ故郷の四方山市に戻ってくる。四方山市立図書館の下町別館で勤め始めるが早々はだかの王様が桃の前に現れ青田早苗ちゃんのつづきが知りたいと大騒ぎ。本の中から登場人物が飛び出してきては桃が読者探しに振り回される。その本に子供達が深く関わりそれなりの理由がありその後幸せだったかどうかを問う展開。桃の心境も孤独だったが次第に変化していき成長していく。児童書だが充分面白く楽しめた。
読了日:9月18日 著者:柏葉幸子
夢を売る男の感想敏腕編集者の牛河原華丸栄社という出版社で部長を務めている。丸栄社はど素人の自己顕示欲につけ込み大金を出させ紙屑同然の本を出版するという詐欺まがいの会社。言葉巧みに近づきお金を出させてカス本を次々と出版する牛河原の本当の目的とは?人は何故ものを書きそれが本になるとはどういう事なのか。書く人出す人読む人それぞれ何を求め何を得て何を失うのか。今までそんな事を考えた事もなかったが牛河原という男を通して考えさせられた。
読了日:9月20日 著者:百田尚樹
名探偵登場!の感想13人の作家が名探偵へ捧ぐオマージュとし出された本。時代を作ってきた数々の名探偵シャーロックホームズ、明智小五郎などをテーマに描かれているアンソロジー。13人の作家がそれぞれ名探偵を題材に描かれていて、どれも面白く楽しめた。
読了日:9月20日 著者:筒井康隆,町田康,木内昇,松浦寿輝,長野まゆみ,津村記久子,片岡義男,藤野可織,谷崎由依,青木淳悟,海猫沢めろん,辻真先,稲葉真弓
何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)の感想刑務官でありながら僕はある衝動を抱えている。児童養護施設で育った僕は物語の中に何度も挿入される鮮明な記憶に悩まされながら自殺した友人のこと、大切な恩師のことを思い出しながら思春期の性や暴力、人の命を奪うことの意味を問いながら迷い悩み死刑囚と接していく。加害者でもなく被害者でもなく死刑を執行する側の心理を思う時複雑な思いが頭から離れない。死刑執行の場面にはひどく心を打たれた。
読了日:9月21日 著者:中村文則
贖いの感想夜になっても自宅に帰って来ない小学6年生の男子が翌朝通っていた小学校の校門の上に頭部が置かれているのを発見自宅から何者かに連れ去られた中学2年生の女子が埼玉県の山の中で刺殺死体となり発見母親が買い物中、車の中に残されていた1歳の男児が何者かに連れ去られ4日後駅のコインロッカーの中から死体となり発見東京埼玉愛知と発生場所や殺害方法も異なり管轄の警察が捜査を進めていくが息詰まるだが全く関係ない3つの事件が1つに繋がっていく加害者は忘れている事を被害者遺族は忘れていない贖いという題名に様々な意味が込められている
読了日:9月22日 著者:五十嵐貴久
異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景 (集英社オレンジ文庫)の感想今作はブリューゲルという画家が謎の鍵。ブリューゲルの世界的コレクター波多野からブリューゲルによる図像術絵画の真偽を確かめる為に瀬戸内海の離島を訪れる。波多野と息子の確執、千景を嫌う父が仕掛けた罠、謎のドラッグパーティーの噂、行方不明の島の女性、一見何の関係もなく見えるが全て庭園の謎という正しい場所に集められた時全ては違う容貌が見え始める。人を操る呪われた絵画は存在するのか?千景と透磨の関係も更に気になる。
読了日:9月23日 著者:谷瑞恵
夜市の感想いずみは高校の同級生だった裕司から夜市へ行こうと誘われる。夜市は妖怪、物の怪がいる不思議な空間。売っているのも理解できない物ばかりで高額だが望む物が何でも手に入る。何か買い物をしなければ夜市から出ることが出来ず夜市に一度行った者は夜市が開かれる事を知らされ行けるのは三度まで。裕司が全財産72万を持ち夜市を訪れたのは幼い頃弟と夜市に迷い込み野球の才能と引き換えに人攫いに弟を売った長い罪の意識から弟を買い戻す為。弟の孤独、裕司の罪悪感どちらも胸に迫る。
読了日:9月23日 著者:恒川光太郎
箱庭図書館の感想一般公募した作品をリメイクした文善寺町という町を舞台にした短編集。一番良かったのは「ホワイト・ステップ」雪の日の不思議な話。お互いが見えない別次元の2人が重なり巡り会う。2人が希望を見つけて歩み出す、優しい気持ちになれる話。オムニバス形式で、それぞれ設定や世界観に個性があり乙一さんが一作ずつ手を加え言葉を紡ぎリズム感が良かった。
読了日:9月24日 著者:乙一
流星ワゴンの感想運転ミスで息子もろとも死を遂げた橋本さん。会社をリストラされ妻はテレクラで不倫中学受験に失敗した息子はいじめに遭い不登校家庭崩壊状態で死んでもいいと考えるようになった一雄。息子と同じ年齢の自分を重ね合わせる余命いくばくの一雄の父・忠雄。過去の人生の分岐点である大切な場所にタイムスリップし過去は変えられるわけでもないが重要な過去の場面で知らなかった妻や子供の心境などを深く知る事で生きていれば未来は変えていく事が出来るというのが良かった。人の気持ちをしっかり理解し家族との向き合い方の大切さが身にしみた。
読了日:9月24日 著者:重松清
てとろどときしん 大阪府警・捜査一課事件報告書 (角川文庫)の感想ふぐ毒の死亡事件に端を発する表題作や下着ドロの意外な真犯人を描く飛び降りた男など6つの事件を大阪府警捜査一課の刑事達が挑む短編集。表題作のてとろどときしんはふぐの毒の成分をてとろどときしんと言い捜査をする黒マメコンビの一人が通っていたふぐ善が廃業し立派なビルになっていた。ふぐ善でふぐ中毒により死人を出してしまい廃業更に地上げにあっていたが売らずに頑張っていた。そんな矢先にふぐ中毒事件が起きその後に建てたビルのレストランのオーナーにふぐ善で働いていた女がなっていた。短編集どれも趣向が凝らしてあり面白かった。
読了日:9月25日 著者:黒川博行
ユージニア (角川文庫)の感想地方の旧家・青澤家で起こった17人が毒殺されるという凄惨な事件。生き残ったのはお手伝いの女性と盲目の美少女・緋紗子。不可解な詩ユージニアが残された。犯人の自殺で幕が閉じるが残る多くの謎。時を経て語りだす人々。緋紗子のことは皆一様に神格化しつつ畏怖の念を抱いている。結局ラストまで何が本当で何が語り手の想像であったのかは誰にも分からない。不思議な感覚の読了感だった。
読了日:9月25日 著者:恩田陸
ハングの感想迷宮入りした宝飾店オーナー殺人事件に新事実が再捜査にあたった警視庁捜査一課特捜一係堀田班は犯人に辿り着き自供も得るが。グロテスクな描写が多く父親の苛烈な暴力に耐える少年の追憶そして異常な光景人間が人間をモンスターに変える。連続する事件の背後に凄まじいまでの暴力を感じる。仕組まれた暴力や殺人よりもずっとずっと怖い。正常な男性ですらも狂気に変える何か心が壊れてゆく様が見えるかのような過激さ事件は思いもかけぬ方向へと疾走する。
読了日:9月26日 著者:誉田哲也
しゃぼん玉の感想女性や老人だけを狙った通り魔や強盗傷害を繰り返し逃避行を続けていた伊豆見翔人は宮崎県の山深い村で老婆と出会い老婆の孫を演じ続けながら彼女の家で暮らす。自分の事をしゃぼん玉にたとえ誰に心配されるでもなく好きな場所をさまよい都合が悪くなれば消えてしまえばいいと考える翔人。だが翔人が少しずつ変わっていく心の揺れと変化が丁寧に描かれている。ラストの2行に凝縮されているのを読み人間って素晴らしいと思った。
読了日:9月27日 著者:乃南アサ
西の魔女が死んだ (新潮文庫)の感想「西の魔女」のおばあちゃんと孫のまい。遺された者が前向きに生きていくには思い入れがあるほどああすれば良かったとかもっと愛情をかけとけば良かったと思ったりと後悔はかりが浮かんでしまうが時間が解決してくれると思う。だがおばあちゃんはそんな事は全てお見通しでおばあちゃんからのメッセージでまいは前向きになれるだろう。まいはおばあちゃんの魂と共に日々を生きている。一人ではない。まいの心の成長を助けてくれる大切な人だった。自分の道は自分で決めやり遂げる自然の中での生活おばあちゃんの優しさが溢れている1冊。
読了日:9月27日 著者:梨木香歩
皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)の感想イヴは前夫ネッドと離婚しお向いのロウズ家の息子トビィと婚約。ある夜ネッドはイヴの寝室に忍び込み復縁を迫るが自分の部屋と向かいあったロウズ家の部屋で死体となったモーリス卿を目撃するが誤解されるのを恐れて助けを求める事が出来ず更にはモーリス卿殺害の容疑者にされてしまう。トリックを成立させると同時にそれを暴く皇帝のかぎ煙草入れという道具をタイトルに使うとは凄い。心理的盲点を突いた内容面白かった。
読了日:9月29日 著者:ディクスン・カー
聖母の感想保奈美は近隣で起きた幼稚園児殺害のニュースを見てから長く辛い不妊治療の末にようやく授かった大切な娘に危機が及ぶのではないかと娘を守る為自ら行動を起こしていく。剣道部の副将の真琴、女性刑事谷崎と年配刑事坂口のコンビ3つの視点で物語は進行。猟奇殺人の犯人が早い段階で解るが犯人ですら困惑する事態。真実が隠され見えなくなってしまう。母の強さ無償の愛が伝わってくる、それでいてサスペンスの醍醐味を堪能できる。ラストはなんとも異様な感じがした。
読了日:9月29日 著者:秋吉理香子
小暮写眞館 (書き下ろし100冊)の感想主人公は高校1年生の花菱英一。両親がマイホームに寂れた商店街の古い写真館を購入するが写真館の看板を残したままにした事から英一の所に不思議な写真が舞い込んでくる。その写真とは心霊写真。謎を解いていくうちに友人、ある女性、不動産の社長、家族、そして小暮写眞館の主の幽霊と触れ合っていく。心理描写がリアルに描かれ4歳で亡くなった妹の風子のエピソードは心の琴線にふれ号泣しました。
読了日:9月30日 著者:宮部みゆき
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