補足:診断と治療
「哲学者はこれまで世界を様々に解釈してきた。しかし、重要なのはその変革だ」とはマルクスの有名な言葉だが、正にその通りだと思う。多くの若者がその言葉にシビレて革命運動に身を投じたが、残念ながら単なるテロリズムに行き詰っている。結果、「世界の真の変革」には未だ至っていな い。何故か。理由は色々と考えられるが、「世界の腐敗」という病の診断が不十分なせいではないか。正しい病理診断があって初めて適切な治療が行われる。ただし、経済世界の病、すなわち資本主義の診断が完璧だとすれば、根源的な病は別にあると考えるべきだろう。そもそも資本主義が病だとしても、大半の人はその病から癒えることを望んでいない。逆に益々病にのめり込んでいく。麻薬のように。資本主義の欲望はパラダイスを夢見させるが、パラダイスそのものがニヒリズムを分泌する。貧困から脱け出し、経済的に豊かになればなるほど深まるニヒリズム。確かに、貧困のニヒリズムの根は深い。それが世界最大の腐敗だと言う人もいるに違いない。しかし、貧困の克服それ自体が新たなニヒリズムを生み出している。これは経済的困窮者の現実を無視した戯言であろうか。聖化は貧困の克服を目指すが、それに尽きるものではない。むしろ、貧困の克服から始まる。神聖な支配は豊かなパラダイスをもたらすかもしれないが、そこに「本当」の豊かさはない。