夢への闖入者 | 新・ユートピア数歩手前からの便り

夢への闖入者

イマドキの若者風の、顔中にピアスをしたチンピラが私の夢に乗り込んできて、次のように捲し立てた。

「面白ければ、それでいいじゃないか。オレは面白いものが見たい。聞きたい。読みたい。目に見えないもの、耳に聞こえない音、言葉にならない言葉。そんな訳の分からないものに関わっている暇などはない。考えるな、感じろ!そうブルース・リーも言っているじゃないか。オレは感じたいのだ。確かに、人の感覚には限界がある。人には見えない世界を見ている他のイキモノはいる。超音波など、人には聞こえない音を捉えているイキモノだっているだろう。犬の嗅覚は人の一億倍とも言われている。お前はそんな超感覚世界に生きたいのか。それならシュタイナー先生の弟子にでもなればいい。それも面白いが何ら特別なことではない。オレにとってはオカルトも神秘主義もエンタメの一つだ。面白ければ何でもいい。目に見えない美女を追いかけるのもいいが、シェリーのアラスターじゃあるまいし、オレは目に見える美女の方がいい。この世界は目に見えるものから成っている。目に見えるものが現実なのだ。目の不自由な人にとっても、その現実は変わらない。結局、お前もまた目に見えない世界に逃げ込もうとしているだけなのだ。現実を直視せよ。そして、面白くない現実を少しでも面白くせよ。そこにお前の生きる意味もあるだろう」

 

目が覚めて、私は混乱していた。このチンピラの言ったことが私の本心なのか。私は現実逃避しているだけなのか。いや、そんな筈はない。私が求めている「目に見えないもの」は断じて超感覚世界に見出されるようなものではない。それは依然として「水平の現実」にとどまる。私は改めて「垂直の現実」について考えようと思った。