円環×直線=螺旋(4)
『大草原の小さな家』(Little House on the Prairie)という西部開拓期のアメリカで貧しいながらも幸福に生きる一家を描いた人気ドラマがある。その再放送を観ているが、私はそこに円環生活の典型を見出す。実に心地いい。日本人の私が観てもそう思うのだから、現代のアメリカ人は更に一層強く「古きよきアメリカ」を意識するに違いない。それはトランプが掲げる「再び偉大になるアメリカ」とどう関係するのか。おそらく、トランプの「偉大なアメリカ」とは質的に全く異なる理想が大草原にはあるだろう。大草原の生活が円環的に偉大なアメリカだとすれば、トランプの求めているのは直線的に偉大なアメリカだ。端的に、前者はアルカディア、後者はパラダイスだと言ってもいい。どちらも理想であることに変わりはない。しかし、その偉大さは互いに鋭く対立する。どちらの偉大さを選ぶかはアメリカ国民の自由だが、「円環のアルカディアか、直線のパラダイスか」という問題は決して他人事ではない。何処の国民であろうと、その問題は不可避だ。ただし、この問題は単純な「あれか、これか」では決められない。何故か。大草原では円環が生活の中心であるとは言え、直線と全く無縁ではないからだ。一家は経済的に豊かになろうと刻苦勉励しているし、子供たちも日々成長する。そもそも開拓のフロンティア・スピリットは直線の精神であり、世界の成長発展は止められない。大草原もやがて開発され、大きな都市に変貌していく。それが時代の流れだ。そして、その流れの果てにトランプの夢見るような「偉大なアメリカ」の復活もある。それを熱烈に歓迎している人たちもいれば、その流れに危機感を募らせている人たちもいる。円環か、直線か。直線のパラダイスを求めて突き進むことが危険だとしても、人はその欲望に抗し得るか。余談ながら、『大草原の小さな家』からの大きな影響が感じられる倉本聰の『北の国から』では円環と直線の葛藤が更に深く掘り下げられている。果たして、我々は黒板五郎のように生きられるだろうか。