現代の英雄 | 新・ユートピア数歩手前からの便り

現代の英雄

「強い人はいない。強い振りができる人がいるだけだ」とは或る著名な作家の作中人物の言葉だが、弱い振りができる強さもあるのではないか。中村主水もクラーク・ケントも普段は昼行灯だが、いざとなれば悪人を成敗する強さを発揮する。最近の「ブラックポストマン」というドラマの主人公もそうだ。「いつもは弱いが、いざとなれば強くなる」――これがヒーローの鉄則だと言ってもいい。例えば、来る日も来る日も虐められて苦しんでいる子供がいるとする。先生に言っても無視される。親に言ってもダメ。親しい友人はいないし、皆「触らぬ神に祟りなし」とばかりに見て見ぬ振りをする。そんな絶望的な状況で待ち望まれるのはヒーローの登場だ。実際、手っ取り早く虐めを根絶したいなら、虐めっ子を抹殺すればいい。それも一番惨たらしい方法で抹殺すればいい。「人を虐めるとこんな悲惨な目に合うよ」という見せしめのために。必殺仕事人に依頼すれば、わずかなお金で請け負ってくれる。それも現実的な「永久平和」への道の一つであろう。法律に反する道だが、超法規的な道を余儀なくされる場合もある。ただし、それはかつてアンチ・ヒーローの道だとされたが、今や「アンチ」が不必要になりつつある。「現代の英雄」としては、大衆はペチョーリンの如きニヒリスト(余計者)よりも安倍元首相を撃った山上容疑者の如き行動者を待望しているのかもしれない。どうもそんな気がしてならない。