人外に堕ちる | 新・ユートピア数歩手前からの便り

人外に堕ちる

大災害時にペットボトルの水を法外な価格で売り捌いた店と無料で配布した店があるとする。もし前者が大儲けして後者が破産するならば、人々は神も仏もない世の中だと思うに違いない。悪人が幸福になり、善人が不幸になる世の中。そんな世の中を変えたいと思う。ただそれだけの素朴な思いで始めた運動なのに、どこで道を踏み外してしまったのか。しかし、悪人は本当に悪人なのか。善人は本当に善人なのか。悪人が善人になり、善人が悪人になる。災害時に水を高値で売った悪人は平時には安売りで儲けようとするかもしれない。それに対して善人はあくまでも適正価格にこだわるとすれば、消費者はどちらから水を買うか。消費者の意識が問われるところだが、一円でも安い水を買う消費者は悪人なのか。商売上手の悪人は店を大きくして、そこで労働する多くの人の生活を豊かにする。商売下手の善人は店を潰し、他人はおろか自分たちも路頭に迷う。悪人の幸福と善人の不幸。しかし、悪人は本当にそれで幸福なのか。善人は不幸に甘んじるしかないのか。善悪の彼岸に迷い込んだ私はよくわからなくなってきた。この現実の世界で理想を求めれば求めるほど、しかもその理想を決してキレイゴトにはしないと力めば力むほど、私は人外に堕ちていくような気がしてならない。