「自由への物語」のための参考資料 | 新・ユートピア数歩手前からの便り

「自由への物語」のための参考資料

中国に返還される直前の香港を日本語教師として訪れたことがある。その際、現地で働く人たちと「返還後に、香港は中国化するか、それとも中国が香港化するか」という話をした。当然、後者を望む声が大勢を占めたが、現実は甘くなかった。雨傘革命などの抵抗運動にも拘わらず、今のところ香港は中国共産党に呑み込まれようとしている。香港における「自由への物語」は大きな壁に直面しているが、台湾はどうか。香港と台湾では状況がかなり異なるが、一つの参考資料として以下を引用する。

「これまで、台湾問題のプレーヤーは、中国の政府、台湾の政府、台湾の民衆の三者だった。そこに中国の民衆は関わる方法を持たなかった。それが次第に変わってきている。台湾への旅行が解禁され、台湾を生で体験した中国の一般大衆が増えるに従って、台湾問題について、伝統的な中国人の思考方法からはみ出す人々が現れてきている。これは、中国にとっても、いささか計算外だったかもしれない。

(中略)

中国は文化大革命で伝統文化を大きく破壊し、中国人のなかの「文化的価値観」まで損なわれた。中国人には「文化の失われた国」に暮らしているという、まるで失楽園にいるような罪悪感がある。そんな中国人は、台湾に来ると、こんな気持ちになるのだという。「台湾は『民国風』に満ちているいいところだ。台湾は伝統的中国文化を守っている」

(中略)

台湾に優良な中華文化が維持されているというのは正しい理解でもある。蔣介石は台湾に逃げてくるときに、中国の文学、演劇、映画、学者など、一流の文化人をこぞって連れてきた。彼らは共産中国で活躍の場がないと考え、国民党と一緒に台湾に渡り、そのまま大陸に帰ることなく、台湾で文芸の道を極めた。多くの弟子をとって、文化の種を台湾に撒いた。その結果、台湾には、高いクオリティの中華文化が育つことになった。

(中略)

失われた中国が台湾にある。そんな思いを、台湾を訪れた中国人は大陸に持って帰っている。そのことが、中国そのものや中台関係にどのような変化をもたらしていくのか。それはこれからもなお見つめ続けるべきテーマだ。」(野嶋剛『台湾とは何か』)

大きな勇気を与えてくれる文章だ。香港、台湾、中国本土――それぞれの民衆が連帯して一つの「自由への物語」を完成する。香港の解放は中国それ自体の解放でもなければならぬ。万国の民衆よ、連帯せよ。そこに祝祭共働がある。不可視のコミューンがある。