ヒーローが立ち去った後(7) | 新・ユートピア数歩手前からの便り

ヒーローが立ち去った後(7)

臆面もなく言えば、私はヒーローになりたいと思っている。それは幼い頃からの夢であり、未熟な大人のまま老人になりかけている今でも変わらない。正義の味方。どんなに些細な悪をも見逃さず、ありとあらゆるこの世の不正を根源から絶つヒーローだ。しかし、それは依然として夢にとどまり、ついに理想には達し得ない。理想はやはりヒーローが立ち去った後にのみ人間の切実な問題として生じてくる。この現実は私をひどく混乱させ、ユートピア問題そのものも実質的に大衆には理解不能なものと化している。実際、ユートピアは大衆から遊離した問題だと見做されても仕方がない。大衆が求めているのはあくまでもパラダイスであってユートピアではないからだ。それ故、私は苦し紛れに「大衆抹殺論」などという乱暴なことを考えて顰蹙を買う結果になるわけだが、「大衆抹殺論」は決して「大衆蔑視論」ではない。むしろ、私もその一人である大衆の在り方をラディカルに思耕すればするほど蔑視などという中途半端な処理では済まなくなる。大衆はパラダイスを求め、それを実現してくれるヒーローを待ち望む。私は今、そうした大衆を徹底的に批判する必要に駆られている。ヒーローになりたいという昔日の夢は夢のまま心に沈殿していき、アンチ・ヒーローにならねばならぬという覚悟だけが私の胸底から渦を巻いて湧き上がってくる。