ヒーローが立ち去った後(6) | 新・ユートピア数歩手前からの便り

ヒーローが立ち去った後(6)

私は先日、「お前は所詮、高等遊民にすぎない」という批判を受けた。私は金持でも特権階級でもないが、日々の生活に困ることはない。それは私が幸か不幸か未だ独身で、すでに父母共に鬼籍に入り、養うべき家族がないことによるものだ。気楽と言えば気楽な身分だが、この気楽さは実に寂しいものでもある。今は亡き両親にその寂しさについて散々警告されたにもかかわらず、老境に入ってやっと身に染みている。事すでに遅し。今更嘆いてみても仕方がない。しかし、私のことはともかくとして、世の中には家族のためにやりたくない会社の命令に従い、下げたくもない頭を下げている人は大勢いる。それが一般大衆の生活に他ならない。そして、そのような理不尽な社会からの脱却を実現してくれる者こそ大衆が求めているヒーローだろう。すなわち、やりたくないことは一切やらなくてもいい社会、裏を返して言えば嫌な労働などしないでやりたいことだけを日々やって暮らせる社会を実現してくれる人物だ。そこに大衆の求めているパラダイスがある。尤も、例えば宝くじに当選してもパラダイスは実現するかもしれない。しかし、そのパラダイスに普遍性はない。また金儲けに秀でた富裕層はすでにパラダイスに生きていると思われるが、そこにも普遍性は認められない。これに対して新しきヒーローはあくまでも「普遍的なパラダイス」の実現を目指す。それが如何にして成るかということも重要な問題だが、私はどうしてもヒーローのその後を考えざるを得ない。大衆の生活を第一のものとして考えられぬ私はやはり高等遊民にすぎないのか。