ユートピアの筋書(7)
安心で安全な生活を望むなら、新しいことは一切しないことだ。昨日に変わらぬ今日、今日に変わらぬ明日、その繰り返し。先人たちの経験が積み重なってできたルーティーン、そこにarchetypeが形成され、その反復が伝統となる。絶対的な神が与えてくれた(とされる)無為自然が失われた楽園と化した今、伝統の保守こそが人間に安楽な生活をもたらしてくれる。失われた楽園(エデン)から伝統の保守による楽園(アルカディア)へ――これがドラマのプロローグとなる。問題はここからの筋書だが、人間はアルカディアに安住できるだろうか。
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伝統的社会というゲマインシャフト。それは個人のオイコスを核とした故郷だと言ってもいい。人は誰しも故郷で育まれる。故郷のない人はいない。しかし、青年は荒野を目指す。一生故郷にとどまる人もいないわけではないが、多くの人は故郷を後にする。何故か。伝統は因循姑息なものとなり、同じことの繰り返しにウンザリする思いがするからだ。たとい安心で安全な生活を失うことになっても、人間は「新しきもの」を求める。それによってアルカディアにはない豊かさを追求する競争が生まれる。それがパラダイスへの筋書だが、そこには常に「歴史の恐怖」という問題がある。かくして筋書はユートピア数歩手前で、アルカディアとパラダイスの相克という様相を呈することになる。