間奏曲:「ユートピアの闘い」のための引用 | 新・ユートピア数歩手前からの便り

間奏曲:「ユートピアの闘い」のための引用

「内在的対抗運動とは、資本主義経済の中で闘うことです。それは労働運動、消費者運動、あるいは、選挙その他の政治活動を含みます。次に、超出的対抗運動というのは、資本主義的でない経済を自分たちで作り出すということです。たとえば、消費-生産協同組合、地域通貨など。」

「歴史的に言えば、超出的な対抗運動は、十九世紀半ばまでの社会主義者によって行われてきたものです。それはある時期からユートピアン社会主義と呼ばれるようになった。」

「ともあれ、十九世紀の社会主義運動では、初期の社会主義運動に固有のものと、新たに労働運動から出てきたものとが共存していました。初期社会主義運動の特徴は、生産過程ではなく流通過程における改革が主であるといえます。たとえば、地域通貨、消費-生産協同組合など。他方で、労働組合を中心とする闘争が盛んになってきたわけです。しかし、それによって旧来の運動が貶められることはなかった。たとえば、マルクスも『資本論』で協同組合運動を高く評価しています。

これが変わってきたのはロシア革命(一九一七年)以後です。以来、エンゲルスの言う「科学的社会主義」は国家統制による計画経済を意味するようになってしまった。一方、非資本主義的な経済を自ら作り出そうとするような運動は「ユートピアン社会主義」として軽蔑されるようになった。そういう風潮がずっとありました。私が『NAM原理』で強調したのは、そのような見方への批判です。

私が「超出的対抗運動」と呼んだものの実質は、いうなれば、旧来、ユートピアン社会主義と呼ばれてきたものです。」

「このように「超出的対抗運動」を重視するからと言って、私は別に、資本主義経済の中での対抗運動を否定したり軽視するわけではありません。また、非資本主義的な空間を創り拡大することで、資本主義経済を追い詰めることが可能であると考えているわけでもない。そうするためには、内在的対抗運動が不可欠なのです。ただ、非資本主義的な経済空間を作り出すことには、別の大きな意味があります。

先ずそれは、人びとに非資本主義的な空間を、ある程度感受できるようにさせます。それは、かつての農業共同体や下町が壊れて、今や圧倒的な資本主義的競争の下で生きている人たちが忘れてしまったコミュニティの感覚を取り戻させる。また、それは今後、資本主義経済が突然破綻するときにも役立つでしょう。」

(柄谷行人「ニュー・アソシエーショニスト宣言」)