アルカディアの拠点 | 新・ユートピア数歩手前からの便り

アルカディアの拠点

私は農文協の雑誌「現代農業」の愛読者で、殊にその増刊号のテーマにはいつも刺激を受けています。例えば、「定年帰農」、「青年帰農」、「自給ルネッサンス」、「なつかしい未来へ」などというものです。また最近発売された8月増刊号のテーマは「戦後60年の再出発:若者はなぜ、農山村に向かうのか」というもので、色々と啓発させられました。


現代の若者たちが、都市の価値観に背を向け(あるいは、背を向けることを余儀なくされ)、一見時代遅れと思われる農山村の価値観に目を向け始めていることには私も注目してきました。と言うより、私がその問題についてあれこれ考えてばかりいるうちに、若者たちの多くはすでに現実的な一歩を踏み出していることに驚いているのが正直なところです。もはや私の出る幕などないでしょう。


尤も彼等の求めているのはアルカディアであって未だユートピアではありません。勿論、それは当然の順序であり、世界中にアルカディアの拠点が生まれていくことは喜ぶべきことだと思います。そして「ゾルレンとしての新しき村」の具体相もそのような拠点たることにあるでしょう。しかし私はやはり、アルカディアからユートピアへの必然性について考えざるを得ません。それは決してアルカディアを否定することではなく、今農山村に向かっている若者たちが真に「新しき価値観」を生み出すためには不可避の問題だと思うのです。


「帰農-自給ルネッサンス-なつかしい未来へ」――それは断じて後向きの運動であってはなりません。と言うより、後向きに戻ろうとするアルカディアはついに画餅にしかすぎないでしょう。現代の競争社会の価値観を超克する「新しき価値観」は前向きに反復されたアルカディア、すなわちユートピアにこそ生まれると思います。